国立能楽堂八月 素の魅力 文蔵 天鼓

d0226702_17172943.jpg国立能楽堂八月 素の魅力
2016年8月25日(木)18時30分より

仕舞 観世流 頼政
梅若玄祥

狂言謡 大蔵流 御茶の水
山本東次郎、山本則俊

狂言語 和泉流 文蔵
野村萬

袴能 喜多流 天鼓
シテ 友枝昭代、ワキ 宝生欣哉、アイ 野村万蔵
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井忠雄、太鼓 前川光長
後見 中村邦生、友枝真也
地謡 香川靖嗣ほか


ちょっと体調を崩して七月後半から八月のお盆過ぎまで、全く何も観ていないので、久々の能楽堂。(せっかくかった切符を何枚も無駄にしてしまった。)

まず仕舞からだったが、謡が今一つの上に玄祥が床几にかけて殆ど動かないのでだんだん退屈になり、寝てしまった。その続きで御茶の水も夢の中。だから観たのは文蔵から。

文蔵は「温糟粥うんぞうがゆ」の名前を思い出すのに太郎冠者が延々と石橋山の合戦をかたる、という狂言。今回はその合戦を語るところだけを語りものとして聞かせます。萬はこういうのが上手だし、ご本人もお好きなのでしょう。今回は長裃、綺麗な絵のある葛桶にかけて始めます。扇も金地で華やか。
面白かった。

大体が暑がりの私、上着を持たないで行ったら意外に冷房が寒くて後悔。考えてみれば着物の人が平気な温度設定にしてあるのだから半そで上着なしは無謀だった。ということで、休み時間は中庭にでてちょっと温まっていました。


袴能は何回か観て「これは面白い」と。まあ、実力者のものしか観ていないから面白いのは当然かもしれないですが。今回の天鼓も友枝昭世ですから期待は高まります。

あれ、と思ったのはまず一畳台が脇正面よりに出されたこと。喜多流のスタンダードなのだろうか(今まで見た天鼓は観世流と宝生流)。その一畳台より前の目付柱寄りの部分に鼓が置かれます。
そして勅使の宝生欣哉登場。ごくごく普通の黒紋付きの袴姿。格調高く天鼓の物語を語ります。これ、狂言口開だったらまったく違った印象になっているのだろうな。

すると三の松に王伯登場。明るい鶯色といった感じの着物にこれも明るい茶系の袴。愛するわが子が殺された経緯を力なく語ります。そこに勅使が一の松まで行って、帝のお召であるぞ、と。

誰が打っても鳴らなくなってしまった天鼓の鼓。親なら音を出せるだろうとのお召。老人の胸には色々な感慨が浮かびますが、ついに台にのぼり鼓を打ちます。右手に撥を二本握ったままで意を決して打つ形。
地謡が物凄く良くて、聞きほれてしまった。

誰が打っても鳴らなかったわが子の鼓、自分が打つと鳴ったこともまた悲しい老人。従者の万蔵が家まで送って行きながら色々なぐさめますが、老人の耳には全く入っていない。
従者は「ああ、気の毒に」と勅使の所までもどりながら色々述懐。萬&万蔵の親子は万作&萬斎のような派手さはないけれど、好きだなー。

そして天鼓の供養のために呂水のほとりに鼓を据えて法事が行われることに。欣哉は正中まで出て行って、お触れを。綺麗な詞章を上手な人が謡うって良いものだなー、としみじみ。
うっとりしながらも何となく後シテは着物を変えて来るのではないかと思っていたらやっぱり。
前シテより一段と明るい色合わせで上が黄色っぽい着物、下が緑がかった明るいグレーかな。

シテとワキとのやりとりの調子がぴたりと合う。そして舞も素晴らしい。国立はいつも照明が明るすぎる(舞台の木の色が薄いので余計そう感じる)と思うのだけれど、袴能の時には、そしてこういう場面では良い感じ。
太鼓が全然知らない人で(京都の人らしい)どうかな、と思ったのですが、考えてみると残りの三人に拮抗するなら巧者に違いない。ということで囃子も素敵でした。

そして最後の地謡の素晴らしい調べにのって、天鼓は帰って行くのでした。

あー、満足した。
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by soymedica | 2016-08-28 17:19 | 能楽 | Comments(0)
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