銕仙会定期公演五月 千鳥 江野島

d0226702_9392225.jpg銕仙会五月定期公演
2016年5月13日(金)18時より@宝生能楽堂

千鳥
シテ 太郎冠者 山本東次郎、アド(主)山本則孝、(酒屋)山本則俊

江野島 道者
シテ 観世銕之丞、前ツレ 北浪貴裕、後ツレ 観世淳夫、子方 長山凛三、馬野訓聡、ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 則久英志、御厨誠吾
笛 藤田次郎、小鼓 吉阪一郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 小寺佐七
地謡 浅井文義
後見 浅見真州、西村高夫、清水寛二


千鳥、今まで大蔵流と和泉流何回か観て、有名曲の割に面白くないなー、と思っていたのですが、本日初めて面白く感じました。こちらの体調や心持のこともあるかもしれませんが、やはり東次郎の腕ではないかと。
皆さんご存知のように、酒屋につけをため込んでいる主人に、「お前は酒屋の主人と親しいのだから今夜の客のために一樽酒をつけで買って来い」と言われる太郎冠者。あの手この手で樽をかすめ取ろうとするところが見せ場。酒樽を代金なしで主人の目の前からかすめ取ると言う結構無理のある設定のせいか、「主人は最後には太郎冠者に酒樽を持って行かせるつもりだったのだ」とか色々な解釈があります。
そんな事お構いなしに一心に演技して全身を使って一生懸命酒樽をとってこようという直球勝負の東次郎の演技が楽しかった。


江野島。珍しい曲の上に小書き「道者」の上演は久しぶりとのことで、事前口座があったりと色々力の入った公演です。

まず、一畳台が大小前におかれ、その上に大宮が。中には弁財天と童子の計三人が入っているはず。子方もあの装束をつけて上手く移動するもんだと、感心。
欽明天皇の御代に江野島が突如として現れ、天女が出てきたりしてそれを祝ったというので、これは大変と勅使がやってくる。宝生欣哉も若い二人も偉そうで元気。

そこに釣竿を持った爺さんと若者登場。「この島はありがたい島だぞよ」と謡う。若者のはずの北浪貴裕、ちょっとビジュアル的におじさん。同吟が若干聞きにくいのですが、どうやら責任は銕之丞にありそうな。絶句もしていたし。
偉そうな勅使はみればそれとわかりそうなものだけれど、田舎の漁師は「あんたたち誰?」。勅使だとわかるとかしこまって、天人や龍神たちが壮大な土木工事をして島をつくった様子を語ります。
そして江野島がいかにありがたいか語るのでした。

そしてやっこらさと、座ると、「昔人をとって喰らう大蛇が鎌倉に住んでいたけれど、弁財天が『結婚してあげるからそんなことやめなさい』というので、大蛇は殺生をやめ、龍口明神となった」と、教えます。
本日地謡がとても良い。地味だけれどやっぱり浅井は実力者。

そして、お爺さんは「実は私はその龍口明神」と言って消えるのでした。
ワキがちょっと後ろに下がり、ワキツレの二人もワキの後ろに回って場所をあけます。作りものがいっそうガタガタ。中で準備しているのかしらん。

「道者」の小書きですので、間狂言が華やか。かるーいイメージの神職が腰にひしゃくをさして登場。江野島ができて、弁財天も来たし、寄付金を集めないと。待っていると参詣人(道者)がとてもたくさんやってきます。先頭の則重がちょうどワキの入場の時のようなつま先立ちの礼をするのが面白い。

ところが彼らはお賽銭を渋る。怒った神職はひしゃくを放り出して数珠をさらさらと揉むと、アーラ不思議、鵜の精が現れて参詣人たちをいさめます(というか脅かします)。鵜の精は金属光沢のある黒っぽい装束でそれらしい。面もかなり黒っぽく(何かな)、黒頭。何回も飛び安座しますが、最後の方はさすがにつらそう。
道者達は脇正面にずら―っと並んで一斉に橋掛かりの方を向いたり、舞台の方を見たり、これも派手。
最後は全員しずしずとお帰り。

すると、作りものの中から女神さまの声が。うーん、淳夫君もわりと直球勝負ですね。引き回しが下ろされると(これ、一畳台の上に乗っているので後見が背の高い人でないとできないかも)、きれいな女神さまの両脇に可愛い童子が。女神は玉を勅使に捧げます(でも女神の舞に邪魔だからすぐに後ろに押しやられてしまうのがおかしい)。

最初の方は女神と童子の相舞ですが、長山クンは全くわが道を行くタイプ、馬野クンは皆と協調したいタイプ。それぞれ上手で先が楽しみ。
天女の舞はあまり優雅ではありませんが、ともかく終わって笛座前の葛桶に腰掛けます。このとき、三人で座れるようにと後見が童子を人形のようにひょいっとずらすのが面白い。
しかしこのあとかなり長い間、天女は肩で息をしていましたが、大丈夫だったのでしょうか。

勇壮な五頭竜王登場。観世銕之丞の鬼神ものっていままでみたことあったろうか。体格の割に何となく弱いのが気になる。何となくみていて「腹筋弱そう」と感じさせる動作であるのと、ポーズの最後の最後で四肢の先の力が抜けてしまうように見える。まあ、あの体格で装束をつけてあの動作ですから辛いのかもしれませんが。
竜王の舞の終わりころには淳夫の息もおさまって、皆で退場。

全体を通してなかなか面白い舞台でしたが、舞台そのものの面白さだけでなく再演の意義や研究にも重点を置いた公演だったのかもしれません。

江ノ島は関東人にはとても近しい島。皆遠足などで一度は行ったことがあるはず。曲目も派手だし、子供も出て来る。入門講座の定番は土蜘蛛と紅葉狩らしいですが、これも良いのではないでしょうか。ちょっと長いし予算オーバーしそうですが。

前シテの面は出目栄満作の朝倉尉、後シテは洞水作の真蛇、後ツレは作者不詳の小面。
[PR]
by soymedica | 2016-05-18 09:40 | 能楽 | Comments(0)
<< 桑田貴志 のうまつり 悪太郎 鉢木 セルリアンタワー能楽堂開場十五... >>