国立能楽堂企画公演 翁 末広がり 春日龍神

d0226702_17112732.jpg国立能楽堂企画公演 特集・寺社と能〈春日大社〉
2016年4月29日(金)13時より

金春流 能 翁 十二月往来・父尉延命冠者
翁・父尉 金春安明、翁 高橋忍、金春憲和
千歳・延命冠者 茂山茂
三番三 大蔵彌太郎
笛 藤田次郎、小鼓 大倉源次郎、清水晧祐、飯冨孔明、大鼓 大倉慶之助
後見 金春穂高、金春康之、佐藤俊之、三番三後見 茂山良暢、島田洋海
地謡 高橋汎ほか

狂言 大蔵流
シテ(果報者)大蔵彌右衛門、アド(太郎冠者)大蔵基誠、(すっぱ)大蔵吉次郎
笛 藤田次郎、小鼓 大倉源次郎、大鼓 大倉慶之助、大鼓 大川典良

能 金剛流 春日龍神 龍神揃
シテ 宇高通成、前ツレ 宇高徳成、後ツレ 種田道一、廣田幸稔、豊嶋晃嗣、宇高竜成、山田夏樹、惣明貞助、小野芳朗、漆垣謙次
ワキ 殿田謙吉、ワキツレ 則久英志、大日方寛、大蔵教義
笛 杉信太朗、小鼓 住駒幸英、大鼓 亀井広忠、太鼓 三島元太郎
後見 松野恭憲、豊嶋幸洋、工藤寛
地謡 金剛永謹ほか


づいている今日この頃。三人も翁が出てくると言うのでどうやるんだろう?と思って出かけました。結果は「そりゃこうするしかないよね」という空間配置でしたが、春日大社舞殿で薪能の初日にやられるときにはもっと狭い場所でやるので、今回演出を若干変えてあるとのこと。そもそも「なぜ三人翁か」などが今月の国立のパンフレットの最後に書いてあります。お勧め。

しーんと静まり返る中、面箱を持った三人が出て来ます。先頭が千歳、後の二人が三番三後見。後の二人の面箱は翁面しか入っていないので若干小さい。続いて翁が三人。装束は白一色。幕の奥ではカチカチと切火の音がずーっとしています。後見以外全員が橋掛かりから登場するので何だか壮観。

小鼓の大倉源次郎の着物が艶のある緑で派手ではないけれど凄く綺麗。この舞台にぴったり。

国立のスクリーンには千歳の舞は「若者によって舞われる前奏」と解説していましたが、上手い説明ですね。やはり千歳は狂言方がやる方がしっくりします。
翁全員が面をつける。

そして翁三人が立ち上がって囃子方の前に並ぶ。全員が脇正面の方をみると、三番三の彌太郎が立ち上がって翁と向き合う。彌太郎が小柄なので何だか翁を睨みあげているような具合。

十二月往来の問答、初めて聞きましたがなかなか良いものです。どこかで使いたい。そして金春安明の発声って「ん」の音がとても綺麗。
翁たちが向きを変えたりするので面の位置が観察できるのですが、憲和の面の位置があれで大丈夫なのか?というほど他の人とずれているな、と思ったら後ろを向いたときに控えめに直していました。

翁舞は三人でやるのかと思ったら二人は常座に控えています。
このギシギシいう音は何?と思ったらどうやら小鼓の緒を締めるときの軋みらしい。誰かの緒が新品なのだろうか。

それにしても後見座での三番三の準備がとても長い。烏帽子を替えている(今回は金の烏帽子に鶴の模様)だけでは無いような。

皆が「萬歳楽」と謡いだすと、ツレは立ち去って、延命冠者と父尉の問答になります。ほんのちょっとの登場。せっかくだからもっと活躍してほしい。
ところで、シテ方が面をとるときには後見が後ろに座ってほどいているけれど、金春流はそうなのでしょうか。観世は自分でほどいていたような。

彌太郎の揉ノ段。これが物凄く力の入った、土臭い舞。足拍子なども物凄く強くて何回も踏むので思わず「行軍骨折」という言葉が頭をよぎる。こんなにエネルギー使って、鈴之段が持つのか??と心配になるほど。でも、見ている方は充実。
鈴之段もちょっと泥臭い感じ。これは大蔵家だからなのか、彌太郎だからなのか。山本家や茂山家とも何だか違う。
見終わったこっちも汗かきました。また観たいな。


次いで末広がり。大蔵彌右衛門の発声は聞き取りにくい。中啓の扇を買いに行くはずが、何を買うのかわからなくて間違って傘を買ってしまう話。
この傘が真っ赤で開いて見せるところがなかなか印象的でした。
太郎冠者に古い傘を売りつけるすっぱが「これさえ歌えばご主人のご機嫌になること間違いなし」と教える歌:
  かさをさすなる春日山
  これも神のちかいとて
  人が傘をさすなら
  われもかさをさそうよ
  げにもさあり
  やようがりもそうのよ

前に何回か観ている演目なのですが、前に見たとき囃子つきだったろうか?しゃぎり留でした。


今回は龍神が沢山出てくる龍神揃という小書きの春日龍神。今思い返してみると、記憶に残るのは後場の龍神たちの並んだ様子のみ、という凄さでした。

気を取り直して最初たどってみます。明恵上人が中国への留学の挨拶のために春日明神にやってきます。明恵上人は声も良いし、姿も立派。すると、危険な渡海をさせたくない春日明神は時風秀行を使わします。
このシテ、立ち姿が凄く上品。
ふと、囃子陣を見ると小鼓がみたことない人。金沢の方だそう。太鼓は眠そうである。後場しか出番がないんだし、人間国宝なんだから、必要な時だけ舞台に出てくるようにしたらいいのに、そういうわけにはいかないのか。

シテは立ち姿が素敵、箒もお洒落、と思っていたら、お爺さんはクリのあたりから正中に下居してしまった。後見が肩をおろすついでに箒も持って行ってしまうし、残念残念。

あまりにしつこく行くなと言われ、明恵上人は入唐渡天は止めます、と言ってしまう。しかし、そんなにしつこく止めるあなたは誰?ときくと、
お爺さんはにわかに声色が変わって、「私は時風秀行だ、夜までいたら良いものを見せてやるぞ」と、いなくなってしまう。

アイは末社の神。派手なことはしないでアイ語りをして帰ります。

ここでワキツレがワキの後方に移動。たくさんの龍王が出てくるんだな、と期待させます。

そして龍神たちの入場。なんだか幕のところでもたついているな、と思ったらシテの龍神の龍が物凄――――く大きくてつかえそうになっていたようです。今まで見た中で頭に載せてるものとしては最大。
次いで竜女が二匹(二人?)、続いて龍神が六人。それぞれ難しい名前がついていて名乗りをします。
本舞台に竜女と龍神2人が入ってVの字をつくったところは華やか。
龍女の一人は何だか薄幸の美女のような面。

龍女の舞は相舞なんですが、ちょっと合っていなかったな。
シテもまさかと思ったら動きます。舞働きですが、良くあんなもの頭に載せて動けますね。袖がちょっと引っかかったのをむしり取ったりと大変そう。

うーん、華やかで楽しかったけれど何だかじっくり楽しむという感じでは無いですね、この演出。

楽しい連休初日でした。
写真は何年か前に撮った春日大社の藤。
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by soymedica | 2016-05-02 17:19 | 能楽 | Comments(0)
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