万作を観る会 千鳥 楢山節考

d0226702_16125341.jpg万作を観る会 楢山節考
2015年11月25日(水)@国立能楽堂
正面席10000円

狂言 千鳥
太郎冠者 野村萬斎、酒屋 石田幸雄、主 岡聡史

小舞 鮒 
野村遼太

狂言 楢山節考
原作 深沢七郎、脚色 岡本克巳、演出 野村万作
おりん 野村万作、辰平 深田博治、けさ吉 高野和憲、又やん 月崎晴夫
又やんの倅/雨屋 中村修一
村人 石田幸雄、岡聡史、内藤連、飯田豪
子供 大塚有紗、梶原元煕、坂井海帆、島崎壮一郎、谷本沙羅、林健太郎
語り手/鳥 野村萬斎


千鳥はあの手この手でつけの溜まった酒屋から酒樽をまたもやつけで買おうとする太郎冠者の話。萬斎も上手いが、それを受ける酒屋の石田がまたとぼけた味。何だか前に見たのと違うぞ、と思ったら今まで見たのは大蔵流だった。


小舞のは足遣いが面白い。流れ足だけはわかったけれど他にも名前がついているのか。


さて、休み時間の後は今年最大の呼び物、楢山節考。前回の上演は昭和32年、58年ぶりの再演だそう。会場を見渡しても両方見ていそうな年齢の人はほんの少数。それを考えると万作って凄い。
前回の録画はどこかに残っているのだろうか。

まず、村人が4人橋掛かりに座る。笛と太鼓が地謡座に。前回上演のときにはしきたりがやかましくて能の囃子方の協力が得られなかったそうだ。
切り戸口から出てきた萬斎が、おりんの村の姥捨のしきたり、おりんの家族の状況について朗読し、退場。

村人たちがおりんの長寿を冷やかす謡を謡う中を、万作登場。真っ白な髪の毛に真っ白な皺だらけの老婆。現代の70歳では無くて江戸時代の70歳(今、あのような風貌の老人はたいてい90歳を越えている)。その後ろから息子が「まだお山に行くのは早いのではないか」と言いつつやって来る。
孫のけさ吉は村娘を妊娠させているので口減らしのためにおりんにさっさと山に入ってほしいので憎まれ口を叩いて辰平にどやされる。

本舞台は今、おりんの家。目付柱にはどうやら神棚があるらしい。村の人に大樽で酒をふるまいながら「お山」に行く時の作法が伝えられる。
この、「作法を伝える」にも「作法」があるのだが、そう言う小説の細部まで忠実になぞっている。
そして息子辰平は泣く泣くおりんを背負って橋掛かりから楢山へと出て行く。

ここから本舞台は楢山に。カラスと思われる真っ黒な鳥が登場して蔓桶に立って様子をうかがっていると、今年70になった又やんが息子に背負われて登場。楢山行きが納得できない又やんは頂上に行く前の七谷で突き落とされてしまう。

次にやってきたのは息子に背負われたおりん。頂上につくと雪が降ってくる。母親を諦めきれない息子は、せめて御山行きには縁起が良いと言われている雪が降ってきたことを喜ぶ。
カラスがおりんに白い着物をかぶせると、切戸口から子供が6人やってきておりんの周りでわらべ歌を歌う。ここからは雪の中にいるおりんの回想と幻覚。
おりんの長寿をからかう孫。70にもなって歯が丈夫なことを恥じて自分の歯を石で欠いたことを思い出すおりん。

そうこうするうちにも雪は降り続き、作法を破っておりんの様子を見に来た辰平は雪を喜んで帰っていく。
おりんも白い衣をかづいで退場するのだけれど、受ける印象としては舞台に降り積もる雪に埋もれて行ったのだな、と感じられる。
最後にすべてを見届けたカラスがひと声鳴いて終了。

悲惨な話ですけれど、おりんの誇り高さが印象に残る話です。

原作も名作だと思うし、演出が秀逸。キーとなる息子役の深田博治が非常に良かったです。
こういう古典の基礎の上に立った演劇が今できるのは万作家と茂山家ではないだろうか。

堪能しました。観に行って良かったと思える今年一番の舞台でした。
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by soymedica | 2015-11-29 16:16 | 能楽 | Comments(0)
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