国立能楽堂普及公演 十一月 栗燒 小鍛冶

d0226702_1705813.jpg国立能楽堂十一月 普及公演
2015年11月14日(土)13時より
正面席4900円

解説
剣の遺徳 狐の霊験 三浦裕子

狂言 和泉流 栗焼
シテ(太郎冠者)野村万作、アド(主)月崎晴夫

能 観世流 小鍛冶 白頭
シテ 上田貴弘、ワキ 野口能弘、ワキツレ 野口琢弘、アイ 竹山悠樹
笛 一噌隆之、小鼓 清水晧浩祐、大鼓 山本哲也、太鼓 前川光範
後見 武田尚浩、上田公威
地謡 武田宗和


まずは三浦先生の解説。真面目そうな方である。
相槌を打つ、とかトンチンカンは鍛冶から来た言葉である。そう言われてみればそうですね:上手く相槌が入ればトンテンカン、下手糞だとトンチンカン。
また、剣は戦いの道具と言うよりもそれを持つものを庇護する、持つものの神聖性を保証するシンボルとして捉えられていたということを、古事記の実例をひいて説明。さらには剣に銘を入れる(今回も小鍛冶と狐の銘が入る)と、鋼の強さが低下し、実用品としてよりも象徴性の高いものになると考えられていたそうです。

さて、鍛冶の守り神とされている稲荷明神ですが、穀物の神でもあり、五人の神の統合されたものだとか。神仏習合の考えでは稲荷はダキニ天と同一視されており、そのダキニ天の乗り物が狐であったところから、稲荷明神の使いは狐であり、次第に明神と狐が同一視されるようになったそうです。

小鍛冶は小書き無しの時には赤頭で上演され動物的イメージの演出、白頭では聖性が強く成熟した演出に、黒頭の小書きでは物の怪の要素が強くなるそうです。

小鍛冶の最後に部分の謡には一から五の数字が読みこんであり、最後の「五穀豊穣」を願うおめでたい曲となっている、など有益な知識が一杯のお話でした。


栗燒は、到来物の栗をお客様のために焼いているうちに我慢しきれなくなって全部食べてしまう話ですが、栗を一つ、二つ、と食べてしまう仕草、奇想天外の言い訳(かまどの神が子供連れてきたので差し上げました)など、太郎冠者の語りで見せる話。万作の芸を堪能しました。
雙葉の生徒さんが観ていましたが、学校観劇でこれが観られるなんて幸せだなー。
大蔵流とちょっと食べ方が違ったりして興味深かった。


小鍛冶はあらすじだけ聞くと到底面白いとは思われない話:一条院の霊夢で刀を打つように命令された小鍛冶は相槌を打つものがいないので伏見稲荷にお祈りに行くと、老人(小書き無しの時には童子)が心配するな、と言って消える。うちに帰った小鍛冶が準備をしていると霊狐が出てきて相槌を務める。
しかも前場では社殿の老人が刀にまつわる中国や日本の話を延々とする、というのですから敬遠していたのですが、スペクタクルで面白い曲でした。

まず囃子も何もなしにとことこと一条院のお使いの野口琢弘が出てきて口上を述べます。そして小鍛冶の能弘に刀を打つようにと伝えます。
これは困った、と氏神の伏見稲荷にお参りに行くと、老人が出てくる。初めて見るシテで、1957年生まれ。関西で活躍している人の様です。割と背が高い。
そして謡が解りやすいのだけれど、日本武尊の話(やまとだけ日本武と謡う)などは全部地謡が謡う。地謡もなかなかでしたが。
関西のシテ方って、関東のシテ方よりも演技がさっぱりしていてもったいぶったところのない人が多いような気がする。

さて、ここでシテが引っ込むのはともかく、なんとワキツレを残してワキも帰ってしまう。この後ワキツレは出来上がった剣を受け取るまでやることが無いのだから、この際引っ込んで奥でお茶でも飲んでは如何か、気の毒に。

アイが常座に立って、小鍛冶が剣を打つことを了承した経緯、叢雲の剣の謂れ、などを語り、壇の用意をしなさいと言って退場。竹山悠樹はアイ語りもそつなくこなします。

しめ縄を張った一畳台が正先に出されます。そして衣服を改めた小鍛冶宗近がいったん後見座に行きます。そしてノットと共に壇に上がり幣帛をささげます。ワキ方の野口能弘は若くて元気が良い人なので、こういう役では力強さが生かされてとても楽しい。
笛方の後ろに座っている若者は何だ?と思ったらワキ方で、小鍛冶が片袖脱ぐのを手伝います。

と、ここに金と白の装束の白頭の狐登場。頭には大きな狐の作り物が。作り物は大きいし、シテもワキも二人とも割と大きな人なので、一畳台の上で二人で剣を打つのはなかなか大変そうです。
このシテ、座ったままで向きを変えるのがちょっと辛そうですね。どこか痛いのか、装束の滑りが悪いのか。

最後に勅使に狐が刀を捧げる。助手じゃなくて小鍛冶が献上するべきでは?でも、助手の方が神様だからこれで良いのかな。

狐は幕に駆け込むのかと思ったら三の松で留めました。
めでたしめでたし。


面は前シテが友水の小牛尉、後シテが牙飛出

この本が面白かったです。
演目別に見る能装束Ⅱ 観世喜正・正田夏子 淡交社 
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by soymedica | 2015-11-23 17:03 | 能楽 | Comments(0)
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