第十二回萬歳楽座 狸腹鼓 羽衣

d0226702_22334616.jpg第十二回萬歳楽座
2015年10月15日(木)18時30分より@国立能楽堂
正面席12000円

狂言 狸腹鼓
狸 野村萬斎、漁師 石田幸雄
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠

能 羽衣 和合之舞
シテ 観世清和、ワキ 宝生閑、ワキツレ 殿田謙吉、大日方寛
笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井忠雄、太鼓 観世元伯
後見 観世芳伸、坂口貴信
地謡 梅若玄祥


萬歳楽座、今回はやんごとなき方がいらっしゃっていないためか、それとも回を重ねて安定してきたためか、祝祭ムードは少なく会場の雰囲気も落ち着いていました。
いつもの藤田六郎兵衛のお話も淡々と。藤田流の羽衣の序の舞の笛は序・破・急とだんだん速くなっていくのですよ、などと話してらっしゃいました。

さて、狸の腹鼓。観るのは昨年のござるの座に続いて二度目。うーんと遠くで御調べの音が。笛座前に一畳台が出され、それを秋の花とススキで飾った竹垣で囲む。
後見は万作と深田。

いかにも狸をとって狸汁にして楽しく酒を飲みそうな猟師の石田。今日も狸狩にやってきました。

ふと気付くと揚幕前に姿勢を低くした狸が。またいなくなり、今度は杖をついて歩いて出て来る。いなくなった夫の狸を探して身重の狸が出てきたのでした。広野に着くまでの道行きを謡うと、一度囃子方は引っ込みます。

尼に化けた狸は漁師に「殺生をするものではない」と弓矢を捨てさせるのに成功し、別れて行きます。地味な場面ですが萬斎も石田も上手い。

ところが狸の尼は帰り道で犬に出会いおびえているところを漁師に見とがめられてしまいます。この場面で50センチはあろうかという生け垣を着ぐるみをきたまま飛び越える萬斎、びっくり。

命乞いをする狸に「腹鼓を見せたら助けてやろう」と漁師。ここで再び藤田が登場して笛を。面白いメロディーでたしかに耳につきますね。
腹鼓の場面も初回と違って欄干をたたいてみたり、狸自身が楽しんでいる風情。
すっかり楽しくなった漁師。一緒に踊って幕の中へ。月の夜に響く漁師の楽しげな笑い声。狸も一人残って月を見上げてからくるっとでんぐり返しをして退場。

前回観た時よりもだいぶ演技がこなれてきて「有難い曲」というより「楽しい見どころ満載の曲」となってきた感じ。秋だなー、と感じさせてくれました。


羽衣。一の松当たりの欄干に衣がかけられます。割と渋い色。白竜登場。最近は宝生閑が出てくると嬉しいだけでなく、「今日は大丈夫か」と。本日は途中からワキ後見のように後ろでそっと椅子を差し出すお弟子さんがついていらっしゃいました。使うとちょっと姿勢が崩れるのが残念。

最初のワキ、ワキツレの同吟は全部省略。白竜が「美しい花が降ってくるし、こんなきれいな衣が」と、橋掛かりの衣を取り上げて戻ってくると、美しい天女がよびかけます。宝生閑の歩き方がスタスタとした感じ。舞台でゆっくり重々しく歩く体力が無くなってきたのかな。

その衣をもっていかないでおくれ、と天女。天女の衣ならなおさら返せないと言われ嘆く、その嘆き方が身も世も無い感じでこちらもだんだん気の毒になってくる。白竜もそう思ったのか、「踊るなら返そう」と。
ふと、観世清和のそのしおる手を見て「この人も年取ったな」と思った。

有名な「この衣を返したらそのまま天に上がってしまうだろう」「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを」のやり取りのあと、物着。
白地に藤の花と蝶の模様の長絹、腰巻とつゆ、鬘帯にはオレンジ。

今まで羽衣は何回も見ましたが、真に「ああ、これは天女の舞だ」と納得したのは今回が初めて。ここまで行くには何度も稽古をするのでしょうけれども、それを感じさせない自然さ、優美さ。袖を被くところが凄くきれい。どの瞬間を写真に撮られても大丈夫ですよ、という感じ。
大満足でした。

家元の羽衣という事で、地謡陣も後列玄祥、観世銕之丞、大槻文蔵、観世喜正、という豪華メンバーだったのですが、私としては満足度は低かった。もっと若々しく明るくさらーっとやってほしかったです。

そして天女は霞に紛れて幕に入り、宝生閑が厳粛な面持ちで留を踏んだのでした。

初めて羽衣って良い曲だな、としみじみしました。
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by soymedica | 2015-10-18 22:39 | 能楽 | Comments(0)
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