銕仙会定期公演九月 班女 悪坊 阿漕

d0226702_13244191.jpg銕仙会定期公演九月
2015年9月11日(金)18時より@宝生能楽堂

班女 笹之伝
シテ(花子)観世清和、ワキ(吉田少将)殿田謙吉、ワキツレ(従者)則久英志、御厨誠吾、アイ(野上ノ宿ノ長)三宅近成
笛 一噌仙幸、小鼓 幸清次郎、大鼓 國川純
地謡 観世銕之丞ほか

悪坊
シテ(悪坊)三宅右近、アド(出家)三宅右矩、小アド(茶屋)前田晃一

阿漕
シテ(漁翁、阿漕)浅見真州、ワキ(男)福王和幸、アイ(浦人)高澤祐介
笛 寺井久八郎、小鼓 観世新九郎、大鼓 安福光雄、太鼓 小寺佐七
地謡 浅井文義ほか


凄く久しぶりの宝生能楽堂。ここの照明って好きです。
本日は人気のシテということもあり、満席に近い。

まず班女
三宅近成の野上の宿ノ長が気が強そうでなかなか宜しい。
呼ばれて出てくる花子。吉田少将を思い、上の空。最初ちょっと足さばきが気になりましたが、あとはしっかり。しっかりとは言いながら、観世清和、女をやるとき時々足が開き加減になりやすい。本人も気づいているらしいけれど。

扇を交換した吉田少将が戻らないのでぼんやりして働かない花子を、遊女宿の長は追い出す。ここで中入りとなるのだけれど、大鼓の國川が、シテが中入りしたかどうかをかなり横を向いて確認していたのは何故だろう。

入れ替わりにちょっと東北から帰ってくるのが遅れた吉田少将が部下を連れて野上の宿へ。花子と入れ違いになってしまった。しょうがないので京都へ入り、お参りする用事があるので糺の森へ。少将、ゴージャスな昔の色男、という感じが殿田のルックスと声にぴったり。
そこに花子がやってくる。「笹之伝」という小書きはここのところで花子が笹を持って登場することらしい。本日は「肩身の扇手に触れて」で笹を落とし、舞は扇で舞いましたが、笹で舞う演出もあるとか。

一寸戻ると、この後シテの衣装が素晴らしかった。出てきたときにはっとする。金と黄色を基調にしているのだけれど。観世清和はいつも装束の趣味が良い。
吉田少将の部下が「狂女よ、狂って見なさい」と言う。ここから後半、動きが多くて大きくて面白かった。クセのところで橋掛かりまで行って、「欄干に立ち尽くし」で橋掛かりの柱に手をかける。

最後に扇を見せ合って再開を喜ぶのですが、扇って西洋のハンカチみたいな意味合いがあったのでしょうね。
舞台の内容が濃くてお腹いっぱいの班女でした。

面は河内の若女の本面。とても素敵な面ですが、何だか不気味。


悪坊。三宅のおうちの狂言、最近だんだん好きになってきました。いますよね、ああいう迷惑な酔っ払い。


班女と阿漕、どちらも比較的重い曲だけれど、シテが人気者なので、満席に近い。(銕仙会定期は見所にお年寄りが多いので、早く帰りたがる人も多いのですが。)
遠くから旅をしてきたとは思えないパリッとした出で立ちの福王和幸登場。誰もいない浜辺を見渡しているとふっと釣竿を持ったお爺さんが現れる。

聞く気も無いのに口が勝手に動いてこの土地のいわれを尋ねることになる旅僧。田舎の漁師とは思えないほど饒舌な尉は色々語ると消えていく。

不思議な心地がして僧が土地の人に今の話をすると、「それは阿漕の幽霊に違いない」と。ところで高澤祐介、どこの出身でしょうか。ヒとシの発音が不安定で(私としては)好感が持てる。

僧が阿漕のために回向していると、霊が現れます。
浅見真州は時々不思議な演出をしますが、この後シテの漁師の霊、上はしけ水衣ですが、白の袴に腰蓑というニューファッション。漁がしにくそうなんですが…。

ところで、前シテは釣竿を手に、後シテは四手網を手にしていますが、釣りと網、当時の漁師は両方やったのでしょうか。
阿漕はシテ柱のあたりに網を仕掛けて橋掛かりから「魚が入ったかな?」と覗きこむ。これが楽しそうで、悪いとわかっていてもやめられなかったんだな、とわかります。
波が地獄の炎に変わって、「あら熱や、耐えがたや」と言いつつ、顔の前で手を交差させる仕草は初めて見ました。

「丑三つすぐる夜の夢云々」から最後くらいまでは、演者の工夫が切れたのか、こちらの感性が切れたのか、なんだかおもしろくなかったけれど、この「阿漕」がシテの演出心を刺激する曲だという事は良くわかった。

面は三光尉(古元)、霊神(伝 増阿弥)。

本日観世清和と浅見真州見て、両者とも好き嫌いはあれ、謡も仕舞も素敵だと思うのですが、何もしないで「立っている」という演技は観世清和のほうが上だな、と思ったのでした。
[PR]
by soymedica | 2015-09-13 13:26 | 能楽 | Comments(0)
<< 国立能楽堂九月普及公演 貰聟 女郎花 日本〈聖女〉論序説 >>