銕仙会定期公演四月
2015年4月10日(金)18時より@宝生能楽堂 三山みつやま シテ(里女、桂子ノ霊)鵜澤久、ツレ(桜子ノ霊)鵜澤光、ワキ(良忍聖)殿田謙吉、ワキツレ 大日方寛、梅村昌功、アイ 高野和憲 笛 一噌庸二、小鼓 田邊恭資、大鼓 佃良勝 後見 野村四郎、長山禮三郎 地謡 観世銕之丞ほか 骨皮 シテ(新発意)石田幸雄、アド(住持)野村万作、小アド(檀家)月崎晴夫、中村修一、岡聡史 春日龍神 シテ(尉、龍神)長山桂三、ワキ(明恵上人)則久英志、ワキツレ 御厨誠吾、館田善博、アイ 深田博治 笛 寺井宏明、小鼓 亀井俊一、大鼓 大倉慶之助、太鼓 林雄一郎 後見 清水寛二、岡田麗史 地謡 柴田稔ほか 実は三山、あまり期待しないで出かけました。申し訳ありません、とてもとても良かったです。でも、観る前には 大口を履いたありがたい御坊様が三山を尋ねるところから話は始まります。三山とは香久山、畝傍山、耳成山のこと。香久山が男で、後二つが女とたとえられている。そして香久山に住む男が(ちゃんと膳公成という名前がある)、最初は耳成山の桂子に通っていたけれどそのうち畝傍山に住む桜子のほうが良くなり、桂子は耳成山の池に入水して果てた、という物語を語ります。 この辺、プログラムを見ながら書いていますが、誰がどこに住んでいるかどうでもよくて、出てきた地味な里女の鵜沢久の語りが良かった。あなたそういうジトッとした感じだから捨てられちゃったのよ、と思わず語りかけたい。 さて、高野がお約束のお話の要約。でも、あんまり覚える気もないからどの山が誰か覚えられないまま、後場に突入。 ワキの殿田が素敵な待謡を歌っているとどこからともなく桜子が。いかにも若々しい張りのある声。ちょっと気の強そうな若い美人。気が付くと桂子もいる。この二人の謡の応酬がとても素敵。 持っていた桜の花と桂の枝とで打ち合うなど、豪華絢爛。 でも、なぜか明け方になると「因果の報いはこれまでなり」と桂子が桜子の肩に手をかけ、二人は去って行きます。 とても良い舞台でした。地謡、囃子方も良かった。 囃子方がいかに良かったかは皮肉なことに後の春日龍神でしみじみ思い返すことになるのですが…。 面はシテが増女 甫閑作 連れが小面 銘「閏月」 作者不詳。 骨皮。石田と万作の組み合わせ。万作の坊さんが隠居することになり、石田に寺を譲る。「旦那あしらいが大切」と聞かされ、さっそく傘を借りに来た檀家の人に良い唐傘を貸してしまう。万作に「そういう時には傘は風のために骨は骨、紙は紙となったので、真ん中を結えて天井にあげてあるので使い物にならないだろう、と言って断れ」と言われる。 次に来たのは馬を借りたい人。その人に「骨は骨…」と言って断ったと得意げに言うと、「そういう時には、青草につけておいたら駄狂いをいたいて腰が抜けたので厩の隅につないである、と言って断れ」と怒られる。 次に来たのは明日お経をあげてくれ、と言う人。石田は「私は行かれるが、万作は駄狂いをいたいて…。」と断ったからさあ大変。万作はカンカン。で、そこで「門前のいちゃと逢引したじゃないか」とすっぱ抜かれる、という話。大爆笑。 ところで、これは次々とやってくる檀家の人を「晴夫どのが」「修一どのが」と本名で呼ぶのですが、キラキラネームの人が弟子入りして来たら困りますね。 春日龍神。やけに御都合主義の筋書なのだけれど、能としては華やかだし面白い、好きな演目です。 ですが、この囃子はとてもとても残念だった。特に小鼓、ただ単に高齢なのか病気なのか、全く音が出ていません。なんとかしてほしいな、あの人。 ともかく、弟子を連れた明恵上人、春日明神に到着。中国、インド旅行の前にお別れを、と思っていると箒を手にした宮守の老人登場。ふと、ここがインドであったら、宮守はカーストのどのあたりの位置になる人なのか、と気になる(比較してもしょうがないが)。 ただの宮守とは思えない上品な老人。無謀な海外旅行をしようとする明恵上人を威厳をもって諭します。 お掃除のために腕まくりをしていたのをおろし、威厳を正してこんこんと。 そして自分は時風秀行であると言って、ふーっと消えてしまいます。 深田のアイ。この人、アイ語りも上手なんだな、とふと思った。どこに感心したのか自分でもよくわからないが。 後場の龍神も素晴らしかった。声にはりがあって、動きにキレがある、足遣いがきれい。 ちょっと気になったのはかなり息が切れていたようなこと。あまり動きのない前場でも肩で息をしているのがわかるところがありましたが、調子が悪いのか、そういう人なのか。今年かなり色々な催しを計画されている人のようで、疲れがたまっているのかな。 面は前シテが子牛尉 洞白作 後シテが黒髭 石原良子作。この後シテの面が素敵でした。
by soymedica
| 2015-04-14 08:14
| 能楽
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