第十一回萬歳楽座
2015年4月9日(木)18時30分@国立能楽堂 素囃子 豊穣 笛 藤田六郎兵衛、小鼓 観世新九郎、大鼓 原岡一之、太鼓 小寺真佐人 語り 平家 野村萬 船弁慶 重キ前後之替 前シテ(静御前)観世清和、後シテ(知盛の霊)梅若玄祥、子方 藤波重光、ワキ(武蔵坊弁慶)宝生閑、ワキツレ 宝生欣哉、大日方寛、アイ 野村万蔵 笛 藤田六郎兵衛、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井忠雄、太鼓 観世元伯 後見 木月孚行、上田公威、山崎正道 地謡 観世銕之丞ほか お話の途中から入って、素囃子。新作だそうだが、私には良いのだか悪いのだかわからない。 野村萬の平家。これ、滑稽な内容を大真面目でやるところに面白さがあると思うのだが、皆さん、物凄くかしこまって聞いている。やぱり人間国宝だからだろうか。こういうのは早物語というときいたことがあります。 休み時間をはさんで今回は船弁慶。船弁慶、なぜ前シテと後シテあんなに性格の違う役を一人でやるようになったのだろう(古くは別の役者がやっていたと聞きました)と思いませんか?今回は切符がお高いだけあって別々の役者。前が観世清和、後が梅若玄祥。逆だったらもっとおもしろかったかも(?) ともあれ、義経一行が津の国(摂津の国)の大物浦にやってくる。弁慶はここで静を帰そうと呼び出す。静、オレンジを基調とした波の模様の着物。閑の弁慶。ツレが欣哉なので安心して見ていられはするし、謡も素敵なのですが、なんだか最近「こなしているだけ」になってきたなー。後半の知盛の幽霊を祈り倒すところなども、存在感薄かったし…。 「静はここで帰れ」というのが弁慶の差し金では無く義経の本心だと知る静。烏帽子を渡されるところ、後見が二人出てきて閑は木月に烏帽子をわたす。これ、色々なやり方がありますね。静が後見任せにしないでしっかり自分で結ぶのは、最後に烏帽子を上手く落とさなくてはならないからでしょう。 静は涙を流しながら舞を舞う。橋掛かりまで使って一の松でシオルしっとりした演技。これもさすが観世清和、と思う素晴らしい舞。そしてこの面が美人なんだな。 とぼとぼ、と言う感じで本舞台に戻り、ポトリ、と烏帽子を落とす。この仕草が本当に綺麗。思わず立ち上がる義経。 物凄く情緒的な笛の音の中、静は帰って行きます。 後ろで見ていた船頭「なんてかわいそうなんだ!」と。 でもまあ、「船を用意しろ」と言われ、これは上客、と急いで船をもちだします。皆乗船。あ、ワキツレの大日方ひとり残ったかな(私の角度からは良く見えなかったけれど)。なぜかこのとき弁慶は後見座にいて、そこからゆっくりゆっくり乗船。 しかしこの船頭のセリフは本当に色々ありますね。毎回違うような気がする。今回乗船前からもセリフが多いような気がするのは気のせいか。万蔵の船頭、なかなか良かったけれど、どうも櫂を操る左手の小指が気になる。 どうやら天気が怪しくなり、船頭が苦戦していると、揚幕の向こうに知盛の恐ろしい幽霊が…。先ほど書いたように、後シテは人が変わって梅若玄祥。あんなにでっぷりした人なのに知盛の足さばきがきれい。合わせ法被と言うのだそうだが、白い装束が映える。 そして知盛は閑の弁慶に祈り倒されたというよりは、子方の義経の気迫に押されて揚幕の向こうに走り去っていくのでした。 そのあと、鏡の間で長刀が倒れたのであろう物凄い音がしました。 本日は地謡後列が凄かった。奥から観世喜正、大槻文蔵、観世銕之丞、観世芳伸。でも、地謡ってベテランの有名どころを集めても上手くいくものではないな、というのが皮肉なことによくわかってしまった。どうもエンジンのかかりが悪い地謡陣でした。 本日も皇族のどなたかのお出ましで華やかな雰囲気。 客が派手になると舞台がつまらなくなる、というジンクスが能にはあるような気がしてちょっと気になる。
by soymedica
| 2015-04-11 17:55
| 能楽
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