第六回 広忠の会
2014年11月29日(土)14時より@梅若能学学院会館 8000円 舞囃子 芭蕉 山井綱雄 笛 杉信太朗、小鼓 飯田清一、大鼓 亀井忠雄 木六駄 シテ 山本則重 アド山本則孝、山本則秀、山本凛太郎 朝長 三世十方之出 シテ 坂口貴信、ツレ 谷本健吾、トモ 林宗一郎 ワキ 宝生欣哉、ワキツレ 大日向寛 御厨誠吾 アイ 茂山逸平 笛 杉信太朗、小鼓 飯田清一、大鼓 亀井広忠、太鼓 小寺真佐人 地謡 片山九郎右衛門 梅若紀彰 観世喜正 山崎正道 坂真太郎 観世淳夫 川口晃平 大槻裕一 後見 観世清河寿 清水寛二 山中迓晶 初めて梅若能楽学院会館に行きました。なかなか良いところではありませんか。このサイズの能楽堂、好き。 まず、山井綱雄の「芭蕉」の舞囃子から。この人物凄くすっきりした仕舞をしますし、謡も上手。明日にでも老女ものができそう。 この能楽堂の採光には色々な人が言及していますが、今回も最後のところで光が差して演出効果満点でした。 大蔵流の木六駄を観るのは初めて。細部が和泉流とは異なりますね。和泉流の太郎冠者は木六駄に加え炭も六駄持っていませんでしたっけ。出かける前に飲ませてはもらっていなかったような。地吹雪に合うダイナミックな演技はすごい。箕を着ていないのはなぜかと思ったけれど、これのためか? 動きが激しくて背負った酒樽がずれてしまい後見の則俊がお出ましになって直していました。 こちらは木を届ける先の叔父さんも峠の茶屋までやってくる。茶屋と太郎冠者が酒盛りをしているときには奥で休んでいるという設定なのだけれど、二人があれだけ大騒ぎしたら気づきそうなものですが。 それはさておき、和泉流ほどの大曲ではないけれど、なかなかの熱演でこのバージョンも好きになりました。 しかし見所が物凄く寒かった。あれは寝ないようにという亀井広忠の配慮なのだろうか。牛を追って峠に行くまでの寒さをリアルに感じることができました。 朝長。観ようと思うたびに何かがあっていままで見られなかった曲です。 清涼寺の僧がやってきて地元の人に朝長のお墓の場所を聞いて涙を流しながら弔っています。この人は出家する前は朝長の乳兄弟(と、理解したんですが)だったとか。いつものように危なげのない宝生欣哉。 と、そこに若い女と太刀持ちを連れたちょっと威厳のある上品な女性がやってくる。この人、いつも観世清河寿のツレをやっているひとですよね。宗家に見込まれただけあって上手。 悲しい朝長の最後を語る女。謡は分かりやすく聞きやすい。そしてこういう話をダイナミックにかつ哀切に謡うと言うのは修練のたまものなのだろうな。 女が御宿をお貸ししましょうと言っていなくなった後に朝長の墓のありかを教えた地元の人がやってきます。この人の話も中々良かったけれど、このあたりになると本当に見所が寒くて…。 後シテ登場。朝長は亡くなった時十代半ば、ほっぺがちょっと丸くていかにも若々しい。卍模様の法被に白地に金の波模様の大口。渋い赤の厚板です。 クセのところからぐいぐい引き込まれるような舞台でした。地謡も後場でさらに良くなってきたし。 膝を射られる場面など見ているとシテが誰、などと言うことはすっかり忘れて実際に朝長が演じているように感じられる。切腹のシーンは本当に表情が変わったかのよう。 今回は囃子方の会ということで、囃子も大いに力が入っていたよう。掛け声も大きかったけれど、詞章を消さずに聞ける。ただやたらうるさい人もいるけれど、そういうことは無く、こういうのが上手いということなのだろう。 藤戸を反戦の能、と言う人がいるけれど、こういう舞台こそが反戦の能、って言えるんじゃないかな。 こうやって若くて(でも40くらいだから昔風に言えばベテラン)上手な人がやる舞台って良いものです。 力の入ったパンフレットが作られていて最後に今回のシテ三人(坂口、和久、大島)と広忠が青春時代を語った座談が入っています。是非ご覧あれ。 ところで、16時になるとこの辺の住民は「遠き山に日は落ちて」を延々と聞かせられるらしい。いまどき時間のわかるものを持っていない子供が都内にいるとは思えないのだが。せめてサイレンにしてほしい…。
by soymedica
| 2014-12-02 21:48
| 能楽
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