国立能楽堂五月定例公演 俊寛

d0226702_1628548.jpg国立能楽堂5月 定例公演
5月16日(金)18時30分より
正面席 4900円

俊寛 金春流
シテ 本田光洋、ツレ(丹波少将成経)山井綱雄、(平判官康頼)山中一馬、ワキ 福王茂十郎、アイ 野村又三郎
笛 藤田朝太郎、小鼓 幸清次郎、大鼓 亀井実
後見 櫻間金記、横井紳一
地謡 高橋汎ほか


佐藤融、井上松次郎、佐藤友彦の茶壺、観たかったのだけれどどうしても間に合わず。 


俊寛は最初から観られました。お調べが始まるといつもと違う笛と違うテンポで戸惑う。囃子って流儀よりも個人が結構前面に出るものなのかな。最初に言ってしまうと、大鼓が今一つでしたが、私の記録を見るとこの人は金春流の時によく出てくる人ですね。
などと考えていると、赦免使登場。従者は野村又三郎だし、なかなかそれらしい二人。ただし絶海の孤島にお使いに行く2人ってこんなに位の高そうな人たちで良いのだろうか?ま、迎えに行く相手も凄く立派だから良いのかな。

何しろ成経は烏帽子、大口袴、康頼も法衣とはいえシャキッとした出で立ち。後で出てくる俊寛も腰蓑無し。黒頭でした。

ツレの二人の謡がとてもきれい。そして、なんとなく前向きの感じが、後で帰れるという話に通じるようで面白い。
ともあれ、熊野巡りに見立てたお参りに行ってきた二人を道迎えに出てきた俊寛。お顔はあまり日焼けしていない感じ。この顔面蒼白の弱々しい感じが後の演技とマッチして良かったです。

どうもこの俊寛、反骨精神にあふれてツレの二人とお参りに行かなかったというより、なんだかもう諦めちゃって行かなかった感じ。お酒に見立てた水をもって出てきたは良いけれど、離島での春夏秋冬を思うにつけ、だんだん悲しくなって、桶を捨てて泣いちゃう。

とそこに赦免使が。この赦免使一行が強そうなところがまた俊寛の運命を予感させます。
そして、自分の名前が書状に無いことを知った後の嘆きが深い。
力なく赦免状を捨て、それを拾った康頼・成経はしずしずと船へ。あまり喜ぶわけにもいきません。

「艫綱を押し切って」、のところが見せ場かと思ったら、なんと実際の綱は無く、謡と身振りだけで見せるもの。金春流はいつもそうなのか、本田光洋の演出なのか、無くてもちゃんとわかるものだし、それはそれで良いものだな、と思わせる力量はさすが。

橋掛かりを向いて泣く瞬間のシルエットが綺麗でした。

以前に観た観世清河寿の俊寛は半狂乱の俊寛でしたが、今回の俊寛は諦め、深く悲しむ俊寛でした。ミニマルな変更だけでこんなに印象が変わるものだとは。
大満足。本田光洋がなぜ人気役者なのか、今回はっきりわかりました。


写真は厳島隠者の卒塔婆石。康頼が千本の卒塔婆を作って流したところ、その一本が厳島神社に流れ着いて、大赦のきっかけとなったという話が平家物語にあるそうですが、その卒塔婆が流れ着いた場所だそうです。
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by soymedica | 2014-05-18 16:33 | 能楽 | Comments(0)
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