国立能楽堂四月定例公演 酢薑 海士

d0226702_2159726.jpg国立能楽堂四月定例公演 
2014年4月18日(金)18時30分より
正面席4800円

酢薑 和泉流
シテ(棲売り)三宅右近、アド(薑売り)石田幸雄

海士 懐中之舞 観世流
シテ 浅見真州、子方 谷本悠太郎、ワキ 福王茂十郎、ワキツレ 村瀬提、矢野昌平
アイ高澤祐介
笛 松田弘之、小鼓 観世新九郎、大鼓 河村大、太鼓 観世元伯
後見 清水寛二、谷本健吾
地謡 浅井文義ほか


久しぶりの能楽堂。まずは酢薑。これは期待できる2人。
まず、納豆の藁苞みたいなものを棒の先にぶら下げた薑売りの石田登場。続いて竹筒を棒の先にぶら下げた酢売りの三宅登場。
双方がどちらの方が偉いかを秀句(しゃれ)で言い合う話。薑売りが「から」(辛いから)、酢売りが「す」にかけた言葉を次々と繰り出して互いに大笑いし、じゃあ、一緒に商売をしようと去っていくとても明るい曲です。
石田がなぜか「唐紙」というべきところを「みす」と言い間違えてびっくり。相手のセリフですよ、それ。


海士。簡単に言うと、唐から持ち帰った玉(面向不背)が龍王に奪われた。それをとり返すべく藤原不比等は土地の海士とねんごろになり、子供を産ませた後、「この子を世継ぎにする」ことと引き換えに玉を龍王から奪い返すように、と言う。海士は自らの命と引き換えに見事玉を取り戻す。その子が長じて房前の大臣となり、志度の浦を訪れると海士の霊が現れる。というお話。

ということで子方登場。金色の烏帽子をかぶった大臣です。謡が難しそうなのですが、上手。この「海士」は全体に子方の謡がむずかしそう。子供って後半だんだん早くなるのはピアノの発表会なんかと同じですね。
従者は福王茂十郎、堂々としています。そしてどこからともなくやってきた土地の女に「大臣様が水に映ったお月様を愛でるのに邪魔だからみるめ(海松布)を刈るように」などと命令します。

この海士、じつは大臣のお母さんの幽霊なんです。お互いにそれとはわからないけれど、肉親の情に引かれて出てきたのでしょう。
従者に命ぜられて玉を取り戻す様子を見せる海士。割と写実的に感じられる型でしたが、とても良かった。実は, 浅見真州、有名な人気役者ではありますが、今まであんまり良いと思ったことがありませんでした。本日の演技を見て人気に納得。

海士は房前に手紙を渡して消えてゆきます。そして後シテは龍女。物凄く大きな龍の作り物を頭に載せています。本来成仏できない女性でも、いったん龍女となってから変性男子となって成仏できるという思想によるのだそうです。この舞も素敵でした。
ですが、この時代「いやしき海士」に字が書けたのだろうか。どの程度の階層の女性が想定されている話なのだろうか。実際に海に潜ることができて、かつ字が書けるというのは少し不思議な感じもします。
ともあれ、ここの場面でいつも思うのは、子方が広げると扇って大きいなー、ということ。とても可愛い。

最後に懐に入れていた経巻物をわが子に渡します。巻物を受け取ってしばらく持った後、蔓桶から降りて巻物を広げます。受け取った時に何か不都合があったらしく(私の座っている所からはよくわからなかったのですが)、後見のお父さんが思わず腰を浮かせる場面も。でもさすがは房前大臣。誰の手も借りずにちゃーんと最後まで演じ終えたのでした。

房前は10代前半という設定なので、子供が生まれて間もなく母親は自分の命と引き換えにその出世を託したのでしょう。悲しいお話ですね。
昔はこの役は実際に10代前半のシテ家の後継者が演じていたのではないかとの研究があります。そのほうがもっと切ない演出かもしれない。

本日は西洋人のお客さんが結構多かったのですが(言語から察するに同グループではない)、後ろのフランス人、能が始まってからも結構ひそひそうるさかった。終わって席を立つとき見たらいなかった。いつ出て行ったんだろう?

面は前シテが深井、後シテが泥眼(河内)。

参考は
能苑逍遥(中)能という演劇を歩く 天野文雄 大阪大学出版会
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by soymedica | 2014-04-20 22:01 | 能楽 | Comments(0)
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