国立能楽堂一月普及公演 鬼継子 野守

d0226702_92776.jpg国立能楽堂普及公演1月
1月11日(土)13時より
正面席4800円

解説
世阿弥における「主題」の発見 天野文雄


狂言 和泉流 鬼継子 
シテ(鬼)佐藤融、アド(女)井上松次郎

能 金剛流 野守 留之伝
シテ 豊嶋三千春、ワキ 殿田謙吉、アイ 佐藤友彦
笛 松田弘之、小鼓 曾和正博、大鼓 安福建雄、太鼓 観世元伯
後見 廣田幸稔、豊嶋幸洋、豊嶋晃嗣
地謡 宇高通成ほか


       はし鷹の野守の鏡得てしがな 思ひ思はず他所ながら見ん


能楽堂の食堂でお昼を食べつつ観察したら、「武蔵野大学」というカードを首から下げた女性二人に世話されているグループが。「先生」と呼ばれているから大学の先生なのかな?なぜ団体で来るのかな?それとも先生と社会人学生かな?と、好奇心いっぱいだが聞く勇気無し。


天野文雄先生のお話。思っていたよりもやせ形の人。そして起承転結なくしゃべっているように見えて内容ある話をきちっと30分に収めるのがやっぱり大学の先生だな、と思わせる。本日は「野守」についてではなく、「世阿弥の作品一般について」話すように能楽堂から要請があったので、との前置きから始めます。

世阿弥の作品と言うのはその前の時代の作品(小町物など)が「出来事を描く」ものであるのに対し、「主題」を明確に描いているのが特徴とのお話。
ちなみに「主題」とは何を表すか、であり、「趣向」とはどのようにあらわすか、であって、後者はシテなどによって異なるものである、この「趣向」があることによって観る楽しみが増すと。
そして世阿弥、禅竹、元雅などの主題を描く時代が過ぎさると、また(船弁慶、安宅などのように)出来事を描く能になっていくのです。

そして明治、いや江戸も早いころからこの「主題」という世阿弥の主張は忘れられ、結果として坪内逍遥のように「謡曲は綴れ錦」などという発言が出てくるのです。主題より趣向が
注目されるようになるのは繰り返し上演されるものの宿命とも

具体的にいくつかの謡曲を挙げてその主題を説明してくださいましたが、では「野守」は、というとこれは五番目ものに分類されてはいますが、これは「治世を言祝ぐ」という祝言の能に限りなく近い、とおしゃっていました。天野先生が編集委員の一人である角川学芸出版「能を読む」の第二巻の野守では「歌物語を背景にした、『鏡』と『鬼』に象徴される春日明神の恵み。」となっています。


本日は鬼シリーズなので鬼継子から。この狂言共同者の人たちのお芝居、結構好き。鬼より女のほうが体格が良いのが笑える。松次郎、上手いな。結局この強そうな女がやっぱり鬼より強いということで終わるのだけれど、楽しめました。でも、子供が「三歳」と言う設定には相当無理があるのじゃないだろうか。


野守。言葉が比較的わかりやすいし、動きもあるので人気曲ですよね。大鼓の安福建雄、なんとなく風邪かな?と思ったのですが大丈夫でしょうか。
さて、強そうな山伏の殿田登場。春日野に立ち寄り、名所なので見物します。と、お爺さん登場。田舎の人らしく、無造作にスタスタと。でも、野守にしては教養が高い。野守の鏡について語った後、杖を捨ててまた橋掛かりを帰っていきます。この前場、春日野ってどんなところだったのだろう、となんとなく想像させる広がりのある良い舞台でした。
塚の作り物を出す演出もあるらしいのですが、何回か見ているけれどまだ塚は見たことが無い。

そして里人登場。これもまた野良で働く人にしてはやけに気品がある。江戸時代でいうと庄屋クラスか。このアイも技巧を凝らすところが無く素直で良かったです。

そして山伏が鬼の出現を待って夜通し塚の前にいると、鬼登場、のはずなのですが、実は一度幕が上がった後再び下がり、「一仏成道の法味に引かれて」までは降りたままの幕の後ろで謡いますので、あんまり聞こえない。

後場は力強い鬼の舞が売り、のはずなのではありますが、前半の上品な野守としては大変結構だったシテ、後半には体力が足りません。型はきっちりしているし、動きが遅いというわけでもないのですが、弱々しい。とても残念。前に見た観世の浅見重好が良かったな。
ま、ともかく、鬼はなんと山伏に宝物(でしょ)の鏡を渡しちゃう。で、地獄に帰るよ、とお帰り。そしてワキも地謡後列に鏡を渡して退場。
この留之伝という小書きではシテが黒頭、最後に囃子が引き取って終わる、とありますが、終わり方はそんなに変わっているともおもえませんでした。なんとなく不完全燃焼のまま後場は終わったのでありました。


鬼継子:約20分
野守:60分
面は前シテが三光尉、後シテが出目洞白の小癋見

参考は
能を読む② 世阿弥 神と修羅と恋 角川学芸出版 
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by soymedica | 2014-01-13 09:30 | 能楽 | Comments(0)
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