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あやかし考 田中貴子

あやかし考 田中貴子_d0226702_12321098.jpgあやかし考 不思議の中世へ 田中貴子 平凡社
255ページ3150円
第26回(2004年) サントリー学芸賞・芸術・文学部門受賞


今、「ちょっと『今昔物語集』に興味があるんだけど、古文は読めないし……」などと言う人は多いのである。成熟社会に向かうなか、古典への需要はかなりあるはずだ。(中略)研究者が最新の研究をきちんとわかりやすく書いた本を読んでほしいと切望するのである。

と、後書きにあります。本当にそんな本で面白かった。

最初の章では道成寺絵巻の誕生を探り、次の章では皆も大好きな安倍晴明について語り、あやしい密教について考察したり。

「けころす」考では、言葉の使い方の変遷から、神様が人間を殺す時の方法について考察しています。30ページをこれに費やすって、読む前からちょっとわくわくしますよね。

最後の「あやかしの女たち」では伝説となった女たちー安徳天皇女性説というのがあるのですねーについての考察。「女性はたおやかでやさしく、常に控え目、男性の想像力を超える行動をしてはいけない」という伝統的規範から逸脱すると「悪女」となってしまう、と書いています。この辺、フェミニズム派からは「手ぬるい」とおしかりを受けそうなトーンですが、私には筆者が常識的な人なんだなと感じられました。

物語というのは一本通った主義主張があるものではなく、玉ねぎのようなものだ、という筆者です。平田オリザが「ぼくの演劇には主義主張は無い。面白いと思ったシーンを切り取って見せるのがぼくの演劇だ」と言っていたのを思い出しました。

ということでお勧めです。
by soymedica | 2013-06-19 12:35 | 本・CD・その他 | Comments(0)
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