第11回ユネスコ記念能
2013年5月30日19時から@国立能楽堂 正面席6000円 解説 清水義也 仕舞「舟弁慶 キリ」 金春流 本田芳樹 宝生流 野月聡 金剛流 宇髙竜成 喜多流 友枝雄人 狂言和泉流「寝音曲」 シテ野村万蔵 アド野村扇丞 後見野村太一郎 能 観世流 船辨慶 前後之替 シテ 片山九郎右衛門、子方 片山清愛 ワキ 福王和幸、ワキツレ 村瀨提、村瀨慧 アイ 髙澤祐介 笛 左鴻泰弘、小鼓 後藤嘉津幸、大鼓 谷口正壽、太鼓 小寺真佐人 後見 観世銕之丞他 地謡 観世喜正ほか もう梅雨入りした今年。雨が降ったりやんだりの天気。よくプログラムを見ていなかったら解説、仕舞、狂言、能まで休憩なしの二時間プログラム。 解説の清水義也は観世流の中堅。きびきびした口調で良かったです。 本日は40代の「わざのキレ」を見てください、とおっしゃいましたが確かにそういうラインナップ。 まず、(能が観世流なので)観世流以外の四流の船弁慶キリの仕舞。こうやっていっぺんに並べると違いが大きいのがわかります。舞う人も同じような年代にそろえてあるので流儀の違いがくっきりと前面にでます。そもそも謡いだしの部分が違う。長刀を捨てるところ、場所も違う。確かに金剛は派手。ポーカーフェイスの人と、顔にも力が入る人とがいて面白い。 能楽協会ならではの催し。間に合うように行けて良かった。 何回見ても楽しい寝音曲。調べたら野村万作の太郎冠者、石田幸雄の主で3回も見ていた。世間じゃ中堅の年齢の万蔵もあの二人と比べたらかわいそうなくらい若造だが、とっても良かった。同じ和泉流なので物凄く良く似ているけれど、主のしぐさなどの細かいところの違いが面白い。 たまに違う謡でやったら(曲は海士)、と思うのですがタイミングが難しいのですかね。 船弁慶、前シテの静がなぜ後シテの知盛幽霊になるのか今一つ必然性がわからないけれど(昔は違う人がやっていたらしい)、自分の御贔屓の演者が「たおやかな女も、力強い武士も」演ずるところが見られる、といったところが人気でしょう。 強そうと言うよりは高貴な義経登場。(女の子ですから、と思って調べたら「きよちか」と読む坊やらしい。ジャニーズ系。)子方は歩くとき凄く腕をはるので、疲れそう。ひとまず京都をでて西国に行こう、まあ静は置いていこう、と義経は静のもとへ伝令に。弁慶はとても強そうです。 置いて行かれるにせよ直接義経の口から聞きたい、と静。いつも長々と酒を勧めるところがあるのですが、ここが大幅にカットされている。小書きのためか? ちなみに「前後之替」というのは、普通後シテの知盛幽霊が途中長刀を刀に持ち替えるのですが、ずーっと長刀のまま舞う演出のことだそうです。 ともかく、静は金の烏帽子をつけて「イロエ掛破ノ舞」を舞います。一の松でシオルところが可哀そう。 最後は烏帽子のひもを引いてぽとんと落とし、とぼとぼ去っていきます。 船頭さん。何せ船弁慶を最初に見たときのアイが東次郎の名所教えでしたから、その印象が強いのですが、この人もなかなか。でも、和泉流には「義経さんがまた隆盛になったら家を宜しく」みたいなセリフが無いのが残念。 風が出てきて海上に平家の亡霊が湧いてくる。橋掛かりの向こう、幕から出たり引っ込んだりしているのが一番強そう。(ほかの亡霊はもちろん想像です。)長刀を持って知盛幽霊と名のる(幽霊が名のると言うのもちょっと可笑しいけれど)。 義経は刀を抜いてまるで相手が本当の敵であるかのように迎撃しますがが、そこは弁慶、さすがは山伏。数珠を揉んで撃退。福王流だとあんまり動きが無い。宝生閑、森常好ともにかなり大きく動きましたが、今回は本当に「祈る」という感じ。楷書で書いたような福王和幸にはぴったりのやり方。 知盛も存在感たっぷり。本日は前に仕舞をたくさん見ていたので、それと合わせ装束をつけたときの動きを堪能しました。重量感というよりはキレがある悪役のダンス。 義経は刀さばきもりりしく頑張りました。最後はちゃんと鞘に納めて退場。(ちょっと葛桶が高くて、座っているとき足が可哀想でした。) 囃子も40代中堅であまり普段見掛けない人たちです。中々素敵でしたが、若干メトロノーム風でしたかね。 何事においても肩の力の抜き方がそろそろわかりかけてくるのがこの年代なんだなー、と自分を振り返ってそう思います。
by soymedica
| 2013-05-31 22:42
| 能楽
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