第一回下掛宝生流能の会 八句連歌 檀風

d0226702_1281360.jpg第一回下掛宝生流能の会
2013年3月17日(日)14時より@国立能楽堂
正面席10000円

素謡 経政
シテ 宝生閑、ワキ 野口敦弘

仕舞
俊成忠度 キリ 香川靖嗣
天鼓 友枝昭世

狂言 八句連歌
貧者 野村萬、某 野村扇丞

檀風 
シテ(熊野権現) 高橋章 シテツレ(日野中納言資朝) 武田孝史、
子方(梅若丸) 宝生尚哉、
ワキ(帥の阿闍梨) 森常好
ワキツレ(本間三郎)殿田謙吉、(棹サシ)野口能弘、(輿舁)森常太郎、野口琢弘
アイ 本間の下人 野村万蔵、早打 野村太一郎
後見 近藤乾之助、宝生和英、朝倉俊樹、
脇後見 宝生欣哉
地謡 三川泉ほか


国立能楽堂、駆け込みセーフ。
素謡、本日は宝生閑、見かけはひどく痩せたものの謡はいつもどおりきれい。この調子で復活してほしいのだけれど…。
それにしても、ワキ方宝生流、今まで一度も見たことのない人がいた(地方で活躍している方らしい)。普段ワキ方って地謡しないから皆で声を合わせるのって新鮮かもしれない。

八句連歌。「花ざかりごめんなれかし松の風」「桜になせや雨の浮雲」「幾だびもかすみにわびん月の雲」「こいせめかくる入相の鐘」「にわとりもせめてわかれはのべてなけ」くらいまでかき取ったところでついていけなくなった。こんなことならのんびり聞いていれば良かった(笑)。

檀風。どういう意味かと思ったら檀の字はもともと手偏だったとか、山中玲子先生の解説にありました。
しずしずと日野資朝を先頭に本間三郎、本間の下人登場。
本間三郎(本間の某と名乗っていたが)、は資朝は大切な罪人なので、丁寧に扱いでも誰か会いに来ても合わせるなよ、と下人に命ずる。
そこに都から佐渡まで父を追いかけてきた梅若丸とそれを助ける阿闍梨登場。橋掛かりで身の上を謡います。
梅若丸はすごーいボーイソプラノ。変声期前の男の子の声ってあんなだったかな。

本間の屋敷に二人でやってきて下人に案内を乞います。この本間の下人の野村万蔵、「罪人を人に会わせるなとのお言いつけであったが大切な資朝の息子とのことなのでお伺いをたてましたが」、などというやり取りをするのですが、とても良かったです。

それにしても梅若丸の宝生尚哉、欣哉そっくりですね。

そこで出置になっていた(そして皆いることを忘れちゃっていた)資朝、独り言を言いだす。「こういう宙ぶらりんはいやだから早く処刑してほしい」この人、とても上品で、囚われの身の公達の雰囲気十分。
本間が息子が都からはるばる会いに来たと言うと「それがしは子を持たぬ」、でも「都のものは懐かしいから物陰から見よう」、といって落涙。
涙を見とがめられると「配所を聞きちがえてきたのは不憫だから泣いているのだ」

お前らとにかく帰れ、という本間。そしてこちらとあちらでお互いを思って謡う梅若丸、資朝。最後は声を合わせて謡います。ちょっとミュージカル仕立てですね。

いよいよ処刑の日、輿に乗せられた罪人について行く梅若丸。資朝は本間に「本当はあの子は自分の子。無事に都に送り返してほしい」と頼みます。本間は良い人で、「自分はこんな田舎者だが、約束は違えないできっと無事に送り返す」と約束します。

資朝が掛絡を脱いで退場するのがクビを切られた印。胴体の小袖は後見の宝生和英が持ってきます。
この間、帥の阿闍梨は後見の宝生欣哉に肩上げをしてもらいます。
このあと、資朝の死骸に見立てた小袖と掛絡を正先から後見座へ持って帰るだけの無言の数分が見せ場。パンフレットもこの場面(宝生弥一)が写真になっています。
シーンと静まり返った能楽堂、別に小袖を重そうに持つわけではないのに、「ああ、死んでしまった資朝を抱いているのだな」と思えてくるから不思議。

「さあ、身分の高い罪人の処刑を済ませてみんな疲れたね」、と本間。親切な人で、梅若丸を私宅に泊めて休ませてくれるらしい。
これだけのアレンジをして本間は切戸口から退場。

ところが興奮した梅若丸「本間を打つべし」と言いだす。ここのところで、台詞に詰まり後見の欣哉がつけてやる(お父さんキビシソ―、と思われる口調なんですよね、これが)。緊張のあまり顔は真っ赤、汗なんだか涙なんだか顔もぐちゃぐちゃなんだが、それでも責任感の強さか日ごろの鍛錬のたまものか、このあとは大した破綻も無く最後まで演じ通したのは凄いです。見所の期待を一身に背負っていましたものね。

阿闍梨は一度は「本当の仇は都にいる。その上ここは離島だから切った後逃げられないし」と説得するのだが、熱意に負けて「じゃあ、一の太刀は梅若丸が、その後は私が」と。
このあと、まだ明かりがついているのを消すなど、色々の面白いことがあります。この辺、子方の面倒を見つつ演技を進行させる森常好、タダものでは無い。テンポの良さをとるのか、セリフをぐっと聞かせるのかのバランスのとり方が素敵。

そしてかたき討ちの後港にやってきた二人。おりしも準備万端の舟が出ようとする。呼びとめる阿闍梨。正直に「人を殺して逃げるから乗せてくれ」って言っちゃう、そりゃないんじゃないの?!
逃げる船頭。そこで今までの修業を生かし、舟を祈り戻す。

ここでワキ後見の宝生欣哉が引っ込むのだけれど、その前に小さなため息をふっとついたのが笑えました。本日、日本一気疲れしたお父さんだったのでしょう。能楽界の親子は幸せですね。

そして熊野権現登場(中国の神様かと思った)。この権現よりも森常好の方が力強そうに見えるのがちょっと。まあ「檀風」はもとは手偏の「擅風」で「風を思いのままにする」という意味だったそうなので、阿闍梨がメインだからしょうがないかも。
そして船は無事吹き戻されて二人は本土に戻ったのでした。

あー、面白かった。


写真はパンフレットから。左は宝生弥一、右は宝生閑の筆になる「雅」の字。字も上手なんだ!
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by soymedica | 2013-03-19 12:13 | 能楽 | Comments(0)
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