国立能楽堂11月定例公演 梟 玄象

d0226702_21591427.jpg国立能楽堂定例11月公演
11月16日(金)18時30分より
正面席4800円

(大蔵流)
シテ 善竹忠重、アド(兄)善竹忠亮、(弟)善竹大二郎

玄象 替之型 (観世流)
シテ(漁翁、村上天皇)梅若玄祥、
前ツレ(乳母)片山九郎右衛門、後ツレ(龍神)観世三郎太
ワキ(師長の従者)宝生閑、ワキツレ 殿田謙吉、則久英志、アイ 山本東次郎
笛 松田弘之、小鼓 幸正昭、大鼓 安福光雄、太鼓 小寺真佐人
後見 山崎正道、上田公威、小田切康陽
地謡 岡久広ほか


は狂言のいつものいい加減な山伏が登場する話。大した筋立てがあるわけでも、茸のように派手な舞台ができるわけでもないので、演じるのは難しいかもしれないけれど楽しかった。善竹忠重、忠亮のお二人は頭が小さくて現代風。大二郎さんくらい頭が大きい方が舞台では映えるかも、など失礼なことも考えつつ見ておりました。山伏はお家にいるのを呼んできた、という想定なので、いつもの括袴ではなく、着流しでした。ちょっと見慣れず新鮮。茸のときはどうだったか記憶に無い。


玄象はあまり解説が見当たらない曲なので、色々ネットで探して予習などしてみたのですが結局のところ能楽堂パンフレットが一番詳しかった。琵琶留学をしようとした師長が村上天皇の霊にとどめられて日本に残ることにした、後半は龍神や天皇の霊が舞うという、春日龍神に似た感じの話しです。
当日よーく出演者を見たら、非常に力の入ったラインナップ。定例公演ですが文化庁芸術祭協賛の公演だったのですね。
替之型というのは琵琶の作り物が多く出る小書きだそうです。

まず、お家(塩屋)の作り物が大小前に出されます。軒がちょっと欠けていて襤褸っちいお家。観世清和の師長、宝生閑のお付きの順に登場。偉い人のおつきなのでワキツレ二人も登場(ワキツレはどうしていつも二人なのだろうか。ひとりとか三人という設定はないけど)。唐に行って琵琶を勉強する前に名所を見ようと、須磨の浦にやってきます。それにしても素晴らしい謡、素晴らしいセリフの一行。

と、向こうから桶を左手に持った婆さんと、杖をついた爺さんがやってくる。この爺さんがよろよろしているくせに妙に目の力がある(面は朝倉尉)。色々風流な事を言った後、夫婦はお家に入ります。足が妙にそろって綺麗に入ったのが印象的。それにしても九郎右衛門って良いなー。大鼓の掛け声がとても力んだ感じだったのですが、それを通して凛とした感じの謡が聞こえます。

お家に入ってから爺さんの方が妙に端っこに寄っていたな、と思ったら柱に手をかけて波を聞く準備だったのですね。体格のせいでそう見えるのかもしれませんが、玄祥ってどうも動きがぎごちない感じがして観ていてドキドキします。なお、この爺婆、お家に入るときにはきっちり足を揃えたのに、出るときには側もタイミングもばらばら。

さて、寛大にも師長は一夜のお礼に琵琶を取りだして聞かせます。とても綺麗な色の作り物で、あんなの一つ我が家にも欲しいと思わせる。
その途中で雨が降ってきて師長は(音が合わないと)演奏をやめます。なるほど、「雨の調子は盤渉、琵琶の調子は黄鐘」で合わないと、夫婦は板庇に苫を葺きます。この葺くしぐさが扇を上手く使ってやるので、そうだろうなとは思っていても楽しい。
この後、夫婦で琵琶と琴をお聞かせするのですが、琵琶は師長の作り物を頂いて、琴はこれもまた扇を琴に見立てて演奏します。

この演奏はタダものではない、と師長一行が思うと「本当は我らは村上天皇と梨壷の女御」といって夫婦は退場します。爺さんはさーっと退場するのに婆さんはゆっくり。九郎右衛門、着物の裾がちょっと乱れて残念だったです。かなり柔らかい生地のものだったようで、足の間に裾が絡まったようですが、後見がさっと直してあげればよいのに。

アイの東次郎がやってきてお話。師長の従者と言う設定ですが、この語りが良かったです。そしてこのアイ語りが無いと、ちょっと筋の繋がらないところもあり、重要な役。
実は琵琶博士廉承武が中国から帰る時3面の琵琶を持ち帰ったがうち一つは海が大変荒れたので龍神への捧げものとして海に沈めてしまったというのです。といったお話をしたあとアイは橋掛から帰ります。

塩屋が片付けられます。後半は村上天皇の命にこの龍神が浮かんできて獅子丸を献上。師長はこれを手に入れます(そこに重点は無いようですが、凄い話ですね)。龍神は三郎太クンですが、さすがに綺麗に舞うし、座っているときにほとんど動かない。訓練が行き届いていて感心。真っ赤な頭に一筋の白い毛。その中にちいさなお顔が覗いて可愛い。
天皇も軽やかに舞います。あの体格であの舞は凄い、と妙な関心をしてしまった(失礼)。
そして龍神、村上天皇が天に帰った後、師長一行も帰っていくのでした。

本当に本当に楽しめました。この曲、演者によっては若干冗長と感じさせるのではないかと思うのですが、本日各役者がとても素晴らしく、「次は何?」とわくわくさせられました。
楽しい一週間のしめくくりでした。
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by soymedica | 2012-11-19 22:02 | 能楽 | Comments(0)
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