観世九皐会春季別会 西行桜 秀句傘 山姥

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観世九皐会春季別会
2012年4月28日(土)12時45分開演@国立能楽堂
正面席10000円

連吟 養老
仕舞
嵐山 奥川恒治
龍虎 鈴木啓吾、遠藤喜久

西行桜 
シテ 中森寛太
ワキ 宝生閑
ワキツレ 高井松男、御厨誠吾、大日方寛、工藤和哉
アイ 野村萬斎
笛 一噌庸二、小鼓 幸清次郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 金春國和
後見 鈴木啓吾、長山禮三郎

狂言 秀句傘
シテ 野村万作、アド 石田幸雄、小アド 高野和憲

舞囃子 砧
観世喜之

仕舞
兼平 弘田裕一
花筐 狂 五木田三郎
善知鳥 駒瀬直也

山姥 白頭
シテ 中所宣夫、ツレ 古川充
ワキ 森常好、ワキツレ 館田善博、森常太郎
アイ 深田博治
後見 奥川恒治、遠藤六郎


暑い日。意外に空席が目立つ国立能楽堂でした。結構良い演目なのに、いろいろ重なったようですね。

連吟。こういう会では古いお弟子さんと思しき人たちが前座を務めますが、後ろのおじさん、隣の奥さんにむかって「何だ、あれ、素人じゃないか。これで金とるのか?」まあまあ、と思わずなだめたくなっちゃった。でも、おじさんの言うことにも一理あるか。

仕舞からはプロ。奥川恒治、私の中では何となく丸(要チェック)がついたのでした。

さて、西行桜。世阿弥が昨日の阿古屋松と並べて名前を挙げている能です。作り物が運ばれてきます。中にシテの入っている桜の装飾のもの。この花も葉も桜に見えないのですけれど…。
宝生閑の西行法師がアイを連れて囃子なしにやってくる。どっかで見たようなアイだと思ったら、野村萬斎だった。私は狂言の花折を先に観ているので、花見客を入れるまでの筋を見て、「ああ、なるほど西行桜と花折は一緒に上演できないかも」と、思ったのでした。
西行法師は偉いので、葛桶に座って一人じっくり花見をします。

そこにやってきた花見客(あんなにたくさん来る必然性はないようにも思うけれど、人がたくさん来ると華やか)、ご機嫌のよい西行法師に桜を見せてもらいます。時に高井松男、喘息なのか肺気腫なのか、物凄く呼吸が荒いのが客席まで聞こえる。それと、長袴の捌きがこんなに下手だったっけ?やはり体調がどこか悪いのでは。

客がやってきてうるさいのも桜のせいだわい、と言っていると桜の精が現れる。上着は桜色の地に金の模様、袴は緑。
問答がとても難しくて、予習が足りなかったな、と思ったのですがでも華やかで満足できるものでした。
地謡が私の好みよりはちょっと大人しかったのが残念でしたが。もっと華やかに歌い上げてほしかった。

ところで、ここで想定されている桜は山桜なのでしょうか、しだれ桜なのでしょうか1)。


秀句傘は、シャレを言ってみたい大名が、太郎冠者に命じてシャレの得意な新たな使用人を雇い入れるというもの。この大名、馬も持っていない小物。万作はバカとのにしてはちょっと利口そう。それにしてもこの狂言の最中に楽屋から囃子の練習が聞こえてくるのはあんまり嬉しくない。


そして山姥。ロビーで小母さま方(九皐会でお稽古している人と見ました)が、「ホラ、次が例の中所先生の山姥よ」と、あまり好意的でなく語っていたのはなぜか。スキャンダルのにおい。ふふふ。

善光寺参りに行く百ま山姥の一行が行き暮れていると、老女が現れ一夜の宿を貸そうと言う。どうやらそれが山姥。

幕が良く見える位置にいたのですが「のうのう」とシテが幕の中から呼びかけると、薄暗い中に白い面だけが浮かびあがって怪しい。この、幕の中からの呼びかけは比較的新しい工夫でらしいです(それまでは橋掛りに完全に出てから呼びかけていた)。17世紀から18世紀にかけて徐々に固定していったものらしいです2)。
「山姥とは何だ?」と聞くと案内している地元の人は「それは古い桶が化けたものだとか、うつぼだ」とか言うのですが最後に「木戸だ」「いやそれは鬼女だろう」というシャレの部分は大蔵流と同じですね。深田のアイがなかなか良かったです。

後シテ登場。幕の中でちょっと横を向く動作をする。鹿背杖がとても太くて蔦が巻きついているのはシテの工夫なのか、このお家の伝統なのか。前シテのときよりも一回り大きくなったように見えるのがさすが。上手な人は背丈も異なったように見せることができますよね。
橋掛りまで大きく行く演出で、飽きさせません。そしてとても笛が良かった。
このシテはおそらく理論派なのでは、と思わせる演出でした。
森常好、体調が悪かったのでしょうか、ちょっと表情が気になりました。前日と翌日が阿古屋松ですから、お疲れが出ないと良いのですが。

でも、山姥って何なのでしょうね。


1)能 中世からの響き 松岡心平 角川叢書
2)能苑逍遥 中 能という演劇を歩く 天野文雄 大阪大学出版会
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by soymedica | 2012-04-30 20:51 | 能楽 | Comments(0)
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