国立能楽堂4月定例公演 蟻通 悪太郎

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国立能楽堂4月定例公演
2011年4月20日(金)午後6時30分より
正面席 4800円


狂言 悪太郎 和泉流
シテ(悪太郎)野村万蔵、アド(伯父)野村萬、(出家)野村祐丞

能 蟻通
シテ 観世喜之、ワキ 福王和幸、ワキツレ 村瀬彗、矢野昌平
笛 松田弘之、小鼓 成田達志、大鼓 佃 良勝、太鼓 三島元太郎
後見 五木田三郎、奥川恒治


本日なぜか外人率高し。しかも本当の観光客風のひとが何人か。

狂言の悪太郎、酔っ払いものです。酔っ払って長刀を振り回す鼻つまみの親戚。一計を案じた伯父さんが道で寝込んでいる悪太郎を坊さんに仕立てる。おり良くやってきた坊さん。鉦鼓を叩いてリズミカル。時宗だろうか。前半のからみ酒と後半の坊さんとのかけあいが面白い。この設定では伯父さんは下戸なのだが、そういう演技もやっぱり上手な野村萬。舞台の上でバランス良く二人でさしつさされつすると、若干二人の間に距離があくので、杯を滑らすように最初していました。そのうち何となく修正されたのが面白かった。本人たちは気づいていないのでは。


蟻通。実は、相当に地味そうな曲の上に、観世喜之80歳近い小柄なお爺さんで声量が無いタイプ。私は絶対に退屈して寝てしまうだろうと、ほぼ確信して出かけたのですが、これが予想に反して楽しかった。好きな曲の一つになりました。

紀貫之登場。百人一首の絵のような姿。福王和幸、この人は印象が強いので、この先他の人での貫之を見た時に私はどう感じるのだろうか、と先のことまで心配してしまいます。
最初のワキツレとの謡が若干合わなかったのが残念。ワキツレ、もう少し頑張ってほしかった。

突然雨の中馬が倒れ伏し、周囲は暗闇。困り果てる貫之。すると、向こうから傘を指し松明を持った宮守の爺さますーっと登場。全体を(髪も)金茶色でまとめた上品な装束。この傘が長柄傘だったり松明が灯篭になったりすることもあるそうですが、今回の組み合わせ以外は考えられないくらい、綺麗な登場。
謡の声が細いのも、雰囲気に合っています。そして、囃子の掛け声も心なしか控えめですし、地謡も良いバランス。
「あなたが神域で下馬しなかったから神様がお怒りなのです」と、いさめる様子も穏やかな神職そのもの。偉い人のお話はお声が小さくても皆さん一生懸命聞きましょう。

さすがに祝詞は聞き取りにくかったですが、祝詞は祝詞ですから。
最後になぜか御幣を投げます。そんなことして良いのだろうか、どういう意味なのでしょうか。そして、宮司は神様なのだろうか、神様が乗り移ったのだろうか、と考えながら帰って本1)を見たら「たぶん宮司ではないかと思うけれど、どっちでしょうね」と書いてあった(笑)。

祝詞をあげてもらっている間に雨も上がりところどころ夜空の雲も切れ(そんなこと誰も言わないけれどそういう雰囲気)、紀貫之は元気になった馬とともに晴々と夜道を行くのでした。結構ワキが活躍する曲で、ワキ方では重い習いものになっているのだそうですが、福王和幸、とても清々しく演じていました。観世喜之のか細くて神様に近い感じと、福王和幸の若くて大柄な対比が面白く、能にも配役の妙があるな、と思わせられたのでした。


1)清田弘 能の表現 草思社
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by soymedica | 2012-04-21 20:29 | 能楽 | Comments(0)
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