第六回香川靖嗣の会 川上 安宅

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第六回 香川靖嗣の会 
2012年4月7日(土)14時より @喜多能楽堂
正面席10000円


安宅の関と弁慶 馬場あき子

狂言 川上 
シテ 野村万作、アド 石田幸雄


安宅 延年之舞 貝立
シテ 香川靖嗣 
子方 内田貴成 
立衆 友枝雄人、内田成信、粟谷浩之、佐々木多門、大島輝久、金子敬一郎、狩野了一
ワキ 宝生欣哉
アイ 強力 野村萬斎、太刀持 深田博治
笛 松田弘之、小鼓 鵜澤洋太郎、大鼓 國川純
後見 塩津哲生、内田安信、友枝真也
地頭 友枝昭世


馬場あき子さんの解説。「皆さん、平家物語に弁慶は登場しないんですよ」と。そうだったのかー。能などが題材をとっている武蔵坊弁慶の話のほとんどは義経記によっているそうです。また、熊野出身なのになぜ「武蔵」坊なのかは不明なのだそうですが
さて、奥州藤原氏を頼って落ちて行く弁慶と義経。北陸道は白山信仰がさかんであり、信者である大名の庇護の元、山伏姿になって落ち伸びようとした一行。義経記によると、安宅は容易に通過したようです。その次に富樫を通過しなくてはならないのですがその日はおりしも3月3日。富樫の屋敷では節句のお祝い中。一行を脇道から逃した義経は富樫の注意を引くために屋敷に乱入。でも、結局は持ちきれないほどのお布施を貰って(帰りに取りによりますから、と置いて行った)逃げます。
次の難所は如意の渡りで、渡し守の平権守に義経が怪しまれる。そこで弁慶は「お前がもたもたするからだ」と義経を打ちすえる。
この二つの話を上手く合わせたのがこの「安宅」だそうです。


お目当ての川上。中途失明者の夫が、川上の地蔵に祈ると目があく。でも、それには長年連れ添っている妻を離縁することが必須条件。「そんなこと言ってもまさか一度開けた目をもう一度つぶすようなことはなされまい」とタカをくくっていると本当にまた目が見えなくなる。悲しむ夫と、ほっとして夫の手を引いて帰る妻。この最後の部分をどう演じるかについては万作、いろいろ語っていますが、今回私には「まあ、人生こんなものかな。そんなに悪くないかも。」と思っているように見えました。


さてさて安宅。「勧進帳」という小書きがつくのは観世流のみで、そのほかでは小書きなしでも勧進帳は弁慶がひとりで読むのだそう。三読み物という言い方があると前回書きましたが、「木曾」があるのは観世だけなので、この言い方は本来的には観世にだけ使えるそうです。これは本日天野文雄の「能樂逍遥」2巻(大阪大学出版会)で偶然読みました。子方の友枝雄人クン、急きょ内田貴成(こういう字だと思う)クンに交代。馬場さんが「男の子ですから」と、おっしゃっていたので、骨折でもしたのでしょうか。

富樫の某登場。先日の宝生閑の富樫は「義経を止めろと言われて困ったなー」と、内心思っている関守。本日の欣哉は「手柄の一つも立てようか」と思っている関守。
義経が郎党ひきつれて登場。香川が小柄で子方がもう変声期を迎えようかという年であることもあり、体格があんまり変わらない。この急遽の代役の内田君、立派でした。イケメンだし、おばさんたちのハートをわしづかみ(笑)。「まあ、偉いわねー」という声が後ろから聞こえてきた。

最初の立衆の謡で観世と喜多流と、ああ、こういう風に違うのだ、と感じました。観世が華やかで、喜多流はごつごつした感じ。平成風と昭和(戦後間もなくくらい)のイメージ。結構好き。
香川はパンフレットの本人のあいさつで「弁慶は自分のタイプではない」と書いていますが、そんなこともないのでは。知将という感じの弁慶です。ただ、もう少し謡の音量を上げた方が私は良いと思います。

勧進帳はうーん、やっぱり「そんなにこれが有名?」という文句。前回も今回もいまひとつピンときませんでした。
最後の延年之舞、ものすごく緊張していたように見えました。笛の調子がいま一つだったようなのがシテにはお気の毒でしたが、一行を逃し幕に入った時には思わず拍手、と言う感じでした。

V字になる立衆の並び方、義経が止められたあとの富樫へ迫るやり方、緩急の付け方など、同じ演目を続けてみると流儀による違いがわかって面白いです。(郎党が観世より一人少ないのはいつもなのだろうか。)延年之舞も観世のほうがショーアップされた型付けでした。

先日観世流の安宅で東次郎の強力を見たとき、この役は野村萬斎には無理だろうなと思ったのですが、そんなに妙ではありませんでした。扇をホラ貝に見立てて吹くところはさすがに上手。はまり役ではないけれど、古典のプロって何でもこなすのだな、と思わせられました。


実は野村万作の川上にひかれて買った切符。能の方は数日前に観世流の安宅を見ることが分かっていたので付けたりでしたが、見たら大変に満足だったのでした。
そして馬場あき子さんの解説付きだったことも来て初めて気づいて、ちょっと儲けものをしたような一日でした。


参考は
狂言三人三様 野村万作の巻 岩波書店
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by soymedica | 2012-04-09 10:41 | 能楽 | Comments(0)
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