国立能楽堂3月普及公演 3月24日(土)13時より 正面席4800円 解説 時の鼓 村瀬和子 狂言 和泉流 長刀応答 シテ 野村万蔵、アド解説 野村萬 小アド 野村万禄、野村扇丞 立衆 野村太一郎、山下浩一郎、炭光太朗 能 金春流 籠太鼓 シテ 本田光洋、ワキ 高井松男、アイ 吉住講 笛 森田保美、小鼓 成田達志、大鼓 安福光雄 後見 横山紳一、辻井八郎 解説は村瀬さん。前も一回聞いたことがあるのですが、この方ただの上品な小母さまのように見えてなかなか論理的。現代詩をやる人はものすごく頭が良いと聞いたことがあるが、なるほどと思わせます。若干お召し物の裾が長いのが気になりました。本日は雨ですし。 それはともあれ、日本では天智天皇が漏刻によって時を知らせるようになったのが時計の始まりとされており、それが4月の25日(今の6月10日あたり)のことだそうです。おおよそ昼の真ん中を九つと言い、牛の刻。これより前が午前、後が午後。夜中の真ん中がまた九つでこれが子の刻だったそう。夜明けと日没がそれぞれ六つだったそうです。その他昔の時を知らせる様子を美しく話してくださいました。 「長刀応答(なぎなたあしらい)」ですが、この方のお爺さん(明治五年生まれ)がときどきお使いになっていた言葉だそうです。「まあ、適当にやっておきなさい」とのことらしいです。 さて、今回はアイの話もたくさんしてくださいました。 あしらいアイ(おもにワキの従者として登場して他の役者とかかわり合いながら話の進行にかかわるもの)には三ざるというものがあるそうで:「落ちてござる」が道成寺、「見てござる」が安達原、そして「ぬけてござる」がこの「籠太鼓」だそうです。 いよいよ狂言。長刀応答の意味がわからなかった太郎冠者が長刀を振り回して危なくてしょうがないので皆で取り上げる話。それこそなぎなたの「あしらい」が見事。最後に取り上げる場面も華やか。花見の季節の話なのですが、のどかで明るい感じがぴったり。あまり演じられない曲だそうですが、ぜひまた見たい。 籠太鼓。しょっぱなから地謡前列で腰かけを使う人あり。後見も。ほかの流儀ではそんな人見たこと無い。特に地謡はお若い方だったので、今からそんなに膝が悪いようでは、プロとしてやっていくことは無理なのでは、と余計な心配をしてしまった。生得的に膝に弱点を抱えている人はいるものです。それがわかった時には早く方向転換しないと。 前回も感じたのですが、高井松男、運びが何となく良くない感じ。どこか悪いのだろうか。でも、謡やせりふは満足。ところでこのワキ、偉そうな人なのに、葛桶には座らせてもらえないのですね。 で、うっかり者そうな従者はやっぱりうっかり牢屋に入れた清次に逃げられてしまう。前見た時はこの役は石田幸雄だったのですが、今回はとても若い。それはそれでまた面白かった。このアイには大満足。 逃げられたので、しょうが無いから妻を連れて来て牢屋に入れるのですが、この妻、「可哀そうだから牢屋から出してやろう」と言われても、「この牢屋こそ夫の形見」と言い張る。ここから鼓の段と言われるところまでが見せ場ですが、狂乱のあげく最後は自分で牢屋に閉じこもってしまう。さすがに見せ場は良かったですが、それ以外のところで若干残念な感じもありました。シテが、というより後見が残念だったかな?立ち上がって出て行くそぶりをみせるのにやめたり、とか。 シテは最初に牢屋に入った時には右膝を立てていたのですが、次に座った時には左を立てていました。流儀によってどちらを立てるか決まっていると聞いたことがあるので、そうでもないのだなーと。それとも何か意味があるのか。右を立てると着崩れ激しそうな感じがしますが。 もう一つ、後見の帰るタイミング。普通後見って「え、もう帰っちゃうの?」と思うくらい早く戻るような気がしていたのですが(鏡の間でシテを迎えるためと聞きました)、今回は後まで残って二人で牢屋を運んで帰りました。人手不足なのでしょうか。 そして国立のお客さんはたいてい囃子方が橋掛りに入るタイミングで拍手をするのですが、今回はシテ、ワキ、囃子と皆拍手。お弟子さんが多かったのかな。あまりいつもと違うので、作り物が帰るときにも拍手するのではと思っちゃった(笑)。 参考は 能の表現 清田弘 草思社 写真はルミネ有楽町の桜。東北復興支援の心をこめて47都道府県の桜を集めたそうです。「桜を見上げよう」プロジェクト。
by soymedica
| 2012-03-25 21:12
| 能楽
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