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息吹の会二部 附子 羽衣 ほか

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東日本大震災復興支援能 息吹の会 二部
3月7日(水)@観世能楽堂 18時30分より
正面席7000円

素謡 翁 金春流 金春安明 山井綱雄 他
舞囃子 八島 喜多流 友枝昭世
一調 小塩 津村禮次郎 太鼓 大江照夫
仕舞 
老松
 観世流 北浪昭雄
東北 喜多流 佐々木宗生
 観世流 松山隆雄
連調 小鼓 花月 幸信吾 住駒匡彦

狂言 附子 和泉流
シテ 石田幸雄、アド 深田博治、アド 高野和憲

仕舞 嵐山 宝生流 宝生和英

能 羽衣 和合之舞 観世流
シテ 岡久広、ワキ 福王和幸
笛 寺井宏明、小鼓 幸正昭、大鼓 柿原光博、太鼓 観世元伯
後見 武田宗和、坂井音晴


割合暖かい曇り。6時15分くらいに着いたらまだ入場の列が続いていた。正面席の結構良い場所をゲット。催しの性質か、切符の売り方なのか、若い人が多い。山井綱雄にはお嬢さん(私の眼にはミセスには見えないお歳)のファン多し、などチェック。

全般に大変楽しめる会でした。

の素謡。前回は宝生流の素謡を聞きましたが、受ける印象がだいぶ違う。流派によるものなのか、人によるものなのか。地謡から受ける感じでは後者の要素も大きそう。前後に平伏するのも前回とは違う。

八島の友枝昭世が凄いのは当然として、舞扇のほかにもう一本持っていて使うのも初めて見ました。舞扇よりちょっと短めに見えました。ネットで見ると金春の屋島の仕舞では一本のみでやっているようですが、流儀によるのでしょうか。

津村禮次郎さん、太鼓の大江照夫、立ち居ふるまいからは二人ともご高齢と推察しますが、素晴らしかったです。一調って何かが自分の中でぴたっとあうと面白い。

初めて見た連調。なんでも複数あるのが連調なのだそうですが、今回は小鼓二つ。始めてみましたが、カタルシスあり。

そして狂言、附子。トリカブトのことだそうです。見ながら突然「石田幸雄って酒飲みに違いない」と確信。色々ご指摘のある高野和憲ですが、本日なかなか良かったです。ところで、附子の解説にはたいてい「砂糖を猛毒だと偽って云々」とあります。私はずーっと白砂糖を想像していましたが、「真っ黒な」という台詞があり、黒砂糖だったのかと初めて気付きました。時代を考えればそうですよね。破る掛け軸が「牧谿」というのが凄くて笑っちゃう。


休憩。オレンジ色の総絞り(!)の小母さま(私よりは確実に年上)が、次は「若様よ!」と騒いでいる。若様って誰だ?と思ってプログラムをみたら、宝生和英でした。
この仕舞 嵐山、終わるとまだ宝生和英が準備しきれていないのに地謡がばらばら帰ったように見えましたが…。そして会場が凄くざわざわ。何かまずかったのかな。


そしていよいよ羽衣。前二回見た羽衣が不完全燃焼だったので期待が高まります。白龍登場。プログラムは見ていましたが、ワキが福王和幸だと頭に叩き込んでおかなかったので心の準備ができておらず、登場した時またまたその八頭身のバランスにびっくり。昔の田舎の漁師にしては良く育ちましたね。本日漁師はツレがいないので、竿を後見座におくと、「のどかで宜しい」とも謡わずに、衣を発見します。あのワキ・ワキツレ3人での謡が無いのがちょっと残念。

すると、鳳凰の冠を着けた天女がやってきて、「それは私のですが」と。天に帰れないからそれを返しておくれ、とかき口説くのです。衣は手渡しで返す演出ですが、白龍があまりに美男なので「ここで夫婦になっても良いのでは」と天女はチラッと思ったろうな。夫婦になる伝説のほうが多いし。それにしても謡曲に出てくる庶民でこんなに有名な人はいないだろう。ほかの謡曲の庶民ってそもそも名前があったろうか。

そのあと天女は衣をまとうのですが、今回の物着は非常に簡単。本当に渡された衣をはおるだけ(どこか糸で留めていた)。白に鳳凰の模様です。
割と前のほうの席だったので、細部を観察していたのですが、この方、面の使い方が非常に綺麗。ああ、いま天を遥かに眺めているな、とかいまちょっとほほ笑んだな、とか感じられました。そして天女は地謡に送られて幕へ。

3回目にしてやっと納得できる羽衣でした。それにしても、これだけ数多くやられている演目、役者はやりにくいでしょうね。


息吹の会は若手能樂関係者の発案による公演で、この収益を元手に東北の人に無料の公演を楽しんでもらおうというものだそうです。その心意気に感じてベテランも出演による支援をしているという感じが伝わってきてとても良かったです。

写真は全然関係ないけれど見かけた都バスです。
by soymedica | 2012-03-09 22:29 | 能楽 | Comments(0)
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