国立劇場定例公演12月16日 2011年12月16日(金)午後6時30分開演 脇正面席 狂言 雁礫がんつぶて シテ(大名)小笠原匡、アド(使いの者)吉住講、小アド(目代)野村扇丞 融 窕 シテ 友枝昭世、ワキ 宝生欣哉、アイ 野村万蔵 笛 杉市和、小鼓 横山晴明、大鼓 柿原崇志、太鼓 観世元伯 後見 中村邦生、内田成信 ずーっと不思議に思い、恐れていたこと。国立能楽堂にはクロークが無いのではないか?本日ロッカーは全部使用中。係りの人に聞いたら極めて申し訳なさそうに、「お座席にお持ちいただいて。」と。スペースはありそうなのだから、ロッカー増設とかクロークとか考えた方が良いのでは??特に平日公演は仕事帰りで荷物の多い人もいるでしょうに。 私は脇正面の真ん中の通路際の席だったので困りませんでしたが、私の隣の方は荷物が多く、奥に入る人とお互いに「すいません」と言いあいっこ。 文句はさておき、雁礫。初めて見る小笠原匡と吉住講。結構イケメンコンビじゃないの。恰好だけの弓名人の大名。使いの者が礫を投げて自分の狙っていた雁を仕留めちゃったら、「あれは自分が心の中で狙っていたのだから自分が射たのだ」と、強弁。じゃあ、死んだ雁を射止めたらその雁は大名のものだ、と目代に言われるのですが、それすら失敗。射る前に逡巡するさまが見もの。烏帽子を雁に見立てています。そのうち本当に鳥の死骸に見えてくるから不思議。 さてさて、本当にチケットをとるのに苦労した友枝昭世の「融」です。楽しかった。融を見るのはおそらく三度目で、演目に慣れたということもあるのでしょうが、本当に楽しめました。 今回脇正面だったので地謡って結構奥の方にキチキチに座るんだな、と妙なところに目が行きます。残念なことに笛は全く姿が見えず。 窕(くつろぎ)と言う小書きはパンフレットによると早舞を橋掛りまで使って行うものなのだそうですが、出だしのサシと下歌も省略されるようです。ところで、桶は前後で紐の長さがちがうのね、などというところに感心。 「や、月こそ出でて候へ」のせりふがとても心地よい。 昔を思い出して両ジオリ。可哀想と言うより、しみじみした感じ。この辺で後見が立って出てきて袴の裾を直すのですが、私には大して乱れているように見えなかったので、「後見の足が痺れたか?」と失礼なことを考える。 名高い名所教え。「あれがですね…。」という動作がきれいで、わたし思わずシテではなくて、シテの見ている方に首を動かしてしまいました。途中でワキの向きを変えさせるところがありますが、その時手を取るか、肩に手を当てるか(今回はこっち)などという蘊蓄もあるらしいです。 ところで、潮汲みの動作、やっぱりこれは正面席で見たかったー。框から外に桶を出して汲む動作は標準ではなく、小書きのときにされるものなのですって。 アイは緊張が切れて、あんまり良く聞くことができませんでした。ご免なさいね、万蔵さん。 そしてその夜僧は何事かをかすかに期待しています。ここの宝生欣哉がとても良かった。やはり融の大臣の幽霊が出てきます(能面のこの手の顔は苦手なんですが、昔のハンサムってあんなの?)。僧という良き観客を得て、楽しんでいる様子がしみじみと感じられます。これは秋の能ですが、温暖化も進んでいるし、衣類の性能も良くなっているし、体感としては今頃の感じでは無いでしょうか。ついこの間は皆既月食も楽しんだし、実感としてロンギが感じられてきます。 そして本当に残念なことに夜が明けて、融の大臣は帰ってしまったのでした。 蘊蓄は 清田弘 能の表現 草思社 写真は恵比寿ガーデンプレイスのバカラのツリーのうちの1本。これが国立能楽堂に立っていたわけではありません(笑)。
by soymedica
| 2011-12-17 17:13
| 能楽
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