国立能楽堂普及公演12月 12月10日(土)午後1時より 正面席4800円をあぜくら会割引 解説・能楽あんない めおとの神―「高砂」と中世の注釈世界 田中貴子 狂言 横座 シテ 大蔵彌太郎、アド(耕作人)善竹十郎、(牛)善竹大二郎 能 高砂 シテ 櫻間右陣、ツレ 長谷猪一郎、ワキ 江崎金治郎、ワキツレ 江崎敬三、松本義昭 アイ 大蔵千太郎 笛 寺井宏明、小鼓 久田舜一郎、大鼓 白坂信行、太鼓 桜井均 後見 金春安明、横山紳一 よく晴れた土曜でしたがさすがに外のベンチでお弁当と言う気にはならず。偶然知り合いに会う。能楽堂で知り合いに会ったり、「見かけましたよ」と言われるのはこれで3度目。世の中は狭い。 普及公演には団体扱いがあるのか、本日も福島の教職員組合の御一行が(退職者の親睦会といった年齢構成でしたが)。 さて、有名な「高砂」の解説。講師はなかなか好感のもてる関西弁の女性。私と同年輩かな(もっと若かったらごめんなさい)。 結婚式のキーワードともなっている高砂ですが、すでに室町後期にはどこの部分かは不明ながら何かの祝言として謡われていたようです。そして江戸時代は門出や船出の席で謡われたようです。今のように婚礼で謡われるようになったのは幕末から明治のことだそうですが、その際には若干文句を変えて謡うとは柴田稔さんのブログにも書かれています。もともとは世阿弥作「相生」であったのですが、当時は和歌の道を言祝ぐこと、それを通して国家繁栄を祝う能であったそうです。古今集の仮名序に由来する能ですが、中世の人は古今集にしろ伊勢物語にせよ原点よりは注釈書が好きだったようで、これも古今集の注釈書である三流抄に拠っているようです。(まあ、私も平家や源氏の注釈書は読んでも原典にはあたりませんが…。)この注釈書というのも私たちの考える注釈書ではなく、ありがたくも荒唐無稽な説話がふんだんに盛り込まれたものらしいです。 そして、この能の中に唐突に出てくる「長能」というのも平安の歌人で三流抄にも出てくる人だそうです。 そもそもこれはいつの時代を言祝ぐために書かれた能かというと、詞章には「延喜の帝」とありますが、実際は和歌・連歌の好きだった足利義持のための能だったらしいです。これは天野文雄が最近発表した説だそうです。 そして君臣一体を相生の松のめでたさにかけたとか。ちなみに相生の松は赤松黒松が一体となって生えているものだそうです。これが時代を下って君臣一体から夫婦一体と解釈されるようになったらしい。 また、観世流では住吉明神が松の精として演じられるが下掛では神として演じられ、こちらがもとの形だったろうと。そして住吉明神が和歌の神として日本を守るようになったらしい。ちなみに、現在では高砂神社と近所の(高砂)尾上神社とが謡曲との関係を争っているのだそうです。 さて、狂言の横座です。牛も出てきます。牛が「横座」と呼んだ時にこたえるかどうかの掛け合いの妙を見せるのです。(牛の声の物まねが凄い。)どうも私は大蔵彌太郎さんの声が聞きにくく感じるのです。でも、楽しく拝見できました。耕作人って長袴で登場するのですね。 いよいよ有名な高砂です。ワキも囃子方も笛以外はあまり知らない方たちでした。ワキは福王流で力強い。囃子も元気。おめでたい感じですね。ワキの伸びあがって両手を広げるしぐさが面白いです。見物をしていると爺婆登場。一人は熊手かと思ったら二人とも杉帚でした。途中久の字に落ち葉かきをするところがめでたいと聞いて、注意していたら本当にそういうしぐさをします。こういうトリビアを知っていると、初心者でも楽しく見られます。また、良袖を広げて帆をはるしぐさというのも拝見しました。 世阿弥の脇能というものは後場の舞がハタラキのような強いものではなく、神舞か真の序ノ舞のように静かなものが特色というのもどこかで読んだことがあります。脇能はまとめて短期間に幾つか鑑賞すると面白いかもしれない。 最後に、日本も金持ちでなくてもこの能に象徴されるように平和で楽しく暮らせる国になりますように。
by soymedica
| 2011-12-12 08:30
| 能楽
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